鋼鉄の愛馬と魔法の書が君を四大陸へいざなう。
知らない場所、初めての街、さまざまな出会いが軌道の先にある。
シャレてる暇はない。さあ、出発の時間だ!
第0030号
2005.08.11-14

2005.08.11-14

・秘境探検列車 〜岩泉線〜


 ↑上
 里山を駆け下りるキハ52 149号機。茂市駅から和井内駅まではのどかな里山を走る。和井内より先は秘境となり、これほど大きく撮れるポイントは限られてくる。
(岩手刈屋駅付近にて 2005.08.13)

 →右
 岩泉線の有名な大俯瞰ポイントから、秘境をゆくキハ52 149号機。本当にすごいところを走っている…(^^; ちょうど列車が来たときだけ太陽が雲に隠れてしまい、おどろおどろしい写真になってしまった(T_T)
(押角-岩手大川間にて 2005.08.12)

8/11(木) 八王子〜茂市

 某イベントの前日設営を今回はキャンセルさせてもらった。このイベントの最終日に恒例の打ち上げ会があるのだが、この打ち上げ会がものの見事にこちらの夏休みのど真ん中の日なのだ。打ち上げはぜひとも参加したいのだが、そうすると前にも後にも日にちが厳しくなって旅に出かけられない。特に打ち上げの後に旅立つとなると、打ち上げ翌日が二日酔いであるため(折りこみ済み)、ちょっとキビシイ。となると最後の手段として前日設営をキャンセルして、打ち上げまでに帰って来るというスケジュールになる。

すまん、今回は日程が悪かったよ…。

 行き先はもう決めてある。あの岩泉線である。筆者がキハ52好きなことは、このページを見ている人は知っていると思うが、岩泉線はそのキハ52ががんばっている、超〜ローカル路線である。旅日記17で訪れているのだが、今回はそれ以来、約3年ぶりの訪問となる。
 このコーナーは「たびてつ」なので、本当は鉄道で行かないと主旨からはずれてしまうのだが、今回は車で行くことにした。なぜならば、この岩泉線は日本でもっとも恐ろしいダイヤで走っている路線なのだ。列車の本数はなんと日に3往復だけ!(^^; その3本もまんべんなくあるのではなく、朝の便の次は夕方になってしまうという変則ぶり。

なんと最長待ち時間9時間と20分!(笑)

 さすがに列車に乗って撮影するのは無理というもの…。

っていうか、命に関わります(^^;

 一般的には盛岡か宮古まで列車で移動して、そこからレンタカーというのが定石なのだろうが、今回は八王子からレンタカーで行ってしまうことにした。理由はふたつ。ひとつは再発行を含めてもう10年来持ち続けているハイカをそろそろ使い切らないといけないということ。もうひとつは撮影機材を片っ端から持って行けるということ。まあ、筆者の場合撮影機材のほうは列車でも全部持って行けるぐらいの量しかないので、主に前者の理由による。
 むかーしやっていた仕事で、青森から埼玉の実家まで、ノンストップで東北道を下ってきて約8時間でついたという記憶があったので、10時間もあれば着くだろうと軽い気持ちで出発。埼玉の実家に顔を見せてから行くことにしたため、圏央道・関越経由東北道というルートになる。が、ピークは回避したつもりでもお盆の帰省ラッシュが始まってしまっており、なかなかの交通量。圏央道のI.C.まで2時間もかかるという前途多難っぷり(T_T)
 実家で初めての対面となった、二人目の甥っ子を見学する。…もう立って歩いてました(^^; そしてこちらも初対面の時にもう立っていた一人目の甥っ子のほうは、なんともう幼稚園に通うらしい。

実家の訪問頻度は、岩泉線と同じぐらいですなぉ

 たぶん次に見るときには小学校にあがっていることだろう(^^; そう言ったら弟の嫁さん(これも会ったのは3回目ぐらい?)は冗談だろうと笑っていたが、両親の笑顔は確実に苦笑だった。さすが、わかってらっしゃる(笑) ちなみに、弟はゲーセンに遊びに行ったらしく不在だったのだが、彼とは彼の結婚式以来、6年ほど会ってないんじゃなかろうか?
 実家にいたのは1時間弱。うちの両親も筆者と同じぐらい適当なので、というか、筆者の性格をよくわかっているためか、一緒に昼飯を食うというイベントも発生せず。まあ予告もせずに寄ったので、向こうも対応できなかったのだろう。下手に予告していくと、行ったとたんに親父が見合いをでっちあげてるなんてことにもなりかねない。実家は奇襲するに限るぉ
 実家から東北道の加須I.C.まではすんなり行ったものの、東北道は交通量の増大により、あちこちで自然渋滞が発生しており、盛岡南I.C.に着いたときにはとっぷりと日が暮れていた。そこから暗い山道をおっかなびっくり東進し、岩泉線の分岐駅である茂市駅に着いたのは2200。約12時間の長旅となった。もう山田線を含めて最終列車が出てしまっており、駅の明かりも消えていた。
 長距離ドライブの疲れと、明日の朝からの撮影に備え、近くの空き地に駐車して後部座席で就寝。今回の車はHONDAのFitなのだが、省スペース型の筆者は膝を曲げれば余裕を持って後部座席に収まる。例によって時刻表を枕にし、毛布をかぶると数分で寝てしまったようだ。我ながら便利だなぁ(笑)


 ↑上
 レンタカーを借りに八王子駅に行く途中、時間がちょうど合致したので、いつもの2083レを迎撃。塗装がかなり痛んできたEF64 1033号機。もうちょっと早い時間に車を借りて、豊田のS字で撮影してから出発するというのも考えたのだが、体力を温存するために踏みとどまった。
(西八王子駅にて 2005.08.11)

 →右
 実家の車庫脇に新しく設置された棚に、食べきれないほどなっていたゴーヤ。昔からそうだったが、実家の植物はみんな巨大だ…。
(実家にて 2005.08.11)

8/12(金) 岩泉線

 朝、明るくなる0500に起床。すぐにロケハンを開始する。始発列車までに撮影ポイントを見つけておかなければならない。手始めに茂市駅をうろうろしていると山田線の盛岡行きの始発列車がやってきた。おお、キハ52とキハ58の混成5両編成! 思わず見るてつしてしまったが、明日は撮影しなくては。
 始発列車まではあまり時間がなかったため、近場で適当に撮影ポイントを決める。茂市駅のすぐ近く、国道が岩泉線を越えるところから、逆光気味に撮影する。今日は盛岡色のおでこが赤い塗装、通称「赤鬼」塗装のキハ52、148号機が運用に就いていた。山田線にはキハ52の他に、キハ58やらも運用に就いているのだが、岩泉線は1両編成であるために、キハ52だけが入ってくる。塗色の違いはあれ、必ずキハ52が来るというのは安心だ♪
 始発列車は終点の岩泉までは行かず、4つ目の岩手和井内駅で折り返してくる。撮影後、すぐさま移動して半駅ぐらい行ったところで撮影。その列車がすぐさま茂市駅で折り返してくるので、これは移動せずその場で撮影した。

一日中この頻度で来てくれればたくさん撮れるのだが…(^^;



 茂市駅を後にした始発列車。キハ52 148号機は赤鬼色。朝日がまぶしくて撮影には難しい条件だが、東北の朝はとてもすがすがしい。
 三脚を立てて撮っているにもかかわらず傾いているような…。
(茂市駅付近にて 2005.08.12)

 始発列車が茂市駅で折り返し、本日1本目の岩泉行き列車となる。わずかな谷間に里があり、岩泉線はそれに沿うようにして走る。とにかく緑がきれい。
(茂市-岩手刈屋駅間にて 2005.08.12)

 この後、下り列車は夕方の1600までない。この列車は終点の岩泉駅まで行って折り返してくるので、約1.5hほど余裕がある。この隙に線路に沿って車を走らせ、上り列車を迎撃するポイントを探す。一応各駅の風景を撮影しながら北上。岩手和井内駅までは普通の農村の風景なのだが、始発列車が行かないこれよりも先に進もうとすると、いきなり国道からセンターラインがなくなる。

対向車とすれ違えない国道

 全国には階段の国道なんてのもあるぐらいなので、そう驚くべきことではないのかもしれないが、いよいよ岩泉線の本領発揮というところか。幸いにも筆者の車は小型のFitであるし、対向車もほとんどないのでそんなにビビらずに進めたのだが、岩手和井内駅の次の駅である押角(おしかど)駅を見つけた時、岩泉線の想像以上のすごさに言葉を失った。いや、誰に言うでもなく、自然に一言だけ漏れた。

本気(まじ)っすか!?

 まずカーナビを見ていたのに気付かずに通り過ぎ、方向転換できないもんだから、一生懸命バックで戻って、ようやく見つけた駅の入り口。森の中に車4台分ぐらいのスペースがあり、その半分ぐらいを2つのでかい水たまりが占領している。看板が立ってなければ、誰もここが駅の正面口だとは気付かないであろう。このロータリー空き地からは駅が見えず、看板が立っていても、何かの冗談だと思うこと請け合いだ。一応車を空き地に停めて、いったいどこに駅があるのだろうと車を降りると、目の前に一本の橋がかかっている。幅はわずかに50cm。手すりは片側だけで、もう片側には何もない。それは橋と呼ぶにはあまりに質素だ。それを一言で説明できるとすれば、それは建築現場の足場。橋の手前からでもまだ駅は見えないので、本当にこれを渡って駅に行けるのか半信半疑。恐がりな人ならここで引き返してしまいそうな橋をさくさく渡っていくと、ようやくそこに駅が見えた。…駅も建築現場の足場だ(^^;
 日に3往復しか列車のない岩泉線の、周りに何もないこの場所、

なぜこの場所に駅があるのかがわからない!



 ↑上
 押角駅の駅前。というか、ただの空き地? 広角で撮っているので広く見えるが、かなり狭い。手前の道路が国道。
(押角駅にて 2005.08.12)

 →右
 上の写真の空き地と押角駅の間にある沢を越えるための橋。奥に見える階段を上がって、線路沿いに10mほど行くと駅がある。沢からの高さが1m以上あるので、恐がりの人なら尻込みすること間違いなし。
(姨捨公園にて 2005.08.12)

 恐るべし岩泉線、恐るべし押角駅…。ちなみにトップの右側にある大俯瞰の写真で、上から1/3ぐらいのところにわずかに見えているのが、この押角駅である。この写真からも駅の周りには山しかないことがわかるだろう。もう一度言いたい。

なぜこの場所に駅があるのかがわからない!(^^;

 でも、かなりおもしろいので筆者的にはありだ。間違いなく岩泉線で最凶の駅だろう。もし岩泉線を途中下車しようという物好きがいたら、この駅がおすすめだ(笑) なーに、下り列車で来て降りれば、午前と夜の列車なら1時間、夕方の列車なら2時間でお迎えが来る。

でも、夜の1時間はかなりコワイ…

 何しろ、夜、ロータリーに停めた車の中にいても、説明できない不安と恐怖に襲われるのである。
 そんなおもしろ奇妙な押角駅ではしゃいでいたら、あっという間に上り列車が返ってくる時間になってしまった。仕方がないので、押角駅のちょっと先のトンネルからの飛び出しを撮影。朝の列車は光線の状態が悪くて今ひとつ。


 岩泉からの本日1本目の上り列車。トンネルからの飛び出しを狙ってみた。かなり近いところに三脚を置いて、広角で狙っているので、ISOを上げて1/2000secの高速シャッターを切っている。
(押角駅付近にて 2005.08.12)

 世界一の透明度を誇る龍泉洞の地底湖。神秘的な碧だ。パンフレットにはドラゴンブルーと書いてあった。龍泉洞だからドラゴンなんだろうけど、ケータイのカラーラインナップと同じく意味がわからない(^^; これがドラゴンブルーなら下地島の海の色もドラゴンブルーだなぁ。
(龍泉洞にて 2005.08.12)

 この後はもう夕方の列車まで8時間ばかり列車が来ない(^^; 終点の岩泉駅まで、車で各駅停車のロケハンをしつつ移動。思ったよりも早くロケハンが終わってしまったので、岩泉線唯一の観光地である龍泉洞に寄っていくことにした。
 前回行ったときとルートや説明書きに変更点はない模様。まあ、今回はあまり本気で見て回るつもりではなかったため、新洞の方には行かなかったので、そちらの方は何か変わっていたかもしれない。龍泉洞については旅日記17にいろいろ書いてあるのでそちらを見てもらうとしよう。今回はとにかくおなかが減っていたのと、風呂に入りたかったのとで、さくっと回って出てきてしまった。でも、やっぱり龍泉洞の地底湖は2度目でも美しかった。前回はコンデジだったのでうまく撮影できなかったが、今回は一眼だったので長時間シャッターを切って撮影してみた。手持ちだったので成功率は今ひとつだったが、ぼちぼち撮れているんではないだろうか。
 風呂は龍泉洞の近くのホテルを利用。天然温泉ではなく、温泉の原料石を使った人工温泉だったが、車泊の筆者には普通の風呂でも入れればそれでよい。露天はなかったが、サウナはなかなか熱かった。シャンプーなどが備え付けなのも○。風呂上がりに扇風機にあたって涼んでいて思ったのだが、龍泉洞の中はかなり涼しい、というかやや寒いぐらいなのだが、風呂上がりに入ったら気持ちいいかもしれない。…逆に湯冷めするかな?

 午後の列車の下りは超有名らしい大俯瞰ポイントから撮影することにした。まだ列車まで2時間ほどあったのだが、他に見て回るところもなく、ドライブも道が狭くて恐いので、撮影ポイントのすぐ隣の空き地に車を停めてしばしお昼寝。東北の、しかもこれだけ山の上だけあって、窓を全開にしていると結構涼しい。慣れない車の運転は結構疲れるらしく、あっさり熟睡。セットしておいたタイマーが鳴るまでの間は一瞬だった(^^;
 有名な撮影ポイントだということで、他にも同業者が撮影に来るかと思い、寝る前に三脚だけ立てて場所取りをして置いたのだが、見事に誰も来なかった(笑) 同業者がいたら何mmのレンズでどういう風に撮るのか参考にしようと思っていたのだが当てがはずれた。実際にファインダーをのぞいてみると、50mmでは小さすぎ、100mmでは長すぎる(EOS 20D)。こういうときは70-200mmが欲しくなっていけない(^^; とりあえず全景を入れて50mmで撮ってみたのがトップ右の写真。
 列車が押角に入線してくるところから双眼鏡で見ていたのだが、てっきり朝と同じ赤鬼色のが来ると思っていたのだが、国鉄色のが来てちょっとびっくり&うれしかった♪ そんなせっかくの国鉄色だったが、カメラのプレビューで見たときは小さすぎて塗色なんて関係ない気がした(^^; こういう風景の中に列車がある、みたいな写真はもっと画素数が必要だねぇ。
 この下り列車は終点の岩泉駅で1時間ほど停車するので、再び車で岩泉へとって返す。列車に乗っての撮影ではこうはいかない。
 岩泉駅の中に入って列車を撮影するので、入場券を買おうとすると、委託駅員らしきおばちゃんが「ここには入場券はないよ」と言う。撮影したい旨を伝えると、「自由にどうぞ」とのこと。地方のこの寛大さがうれしい。駅に入ると先に来ていたてっちゃん達が夢中になって撮影をしていた。線路に立ち入っても何も言われていなかったので、筆者もちょっと後ろめたい気持ちで線路を横切って撮影。止まっていてもこの迫力! とても単機とは思えない。

やっぱりキハ52はかっこいいねぇ♪

 本当はライトを点灯させたところが撮りたかったが、おそらく発車寸前まで点かないと思われるので、あきらめて下り列車の撮影ポイントへ移動。が、ロケハン時には午後の列車では順光になると思っていた鉄橋が、見事に日陰になってしまっていた。時間が遅すぎてもう太陽が山の陰に隠れてしまっていたのだ。鉄橋は高いところにあるので、なんとか列車には日が当たるんじゃないかと期待したのだが、結果は下の通り、見事に日陰だった(T_T) 太陽の出ている時間に2往復しかないってのは、想像以上に撮影が難しいなぁ。


 ↑上
 岩泉駅で発車を待つキハ52 149号機。国鉄色のオレンジが夕日を浴びてさらに赤く染まる。ここから折り返す午後の上り列車を撮影できるのは夏の間だけ。
(岩泉駅にて 2005.08.12)

 →右
 渓谷を渡るキハ52。ロケハンした時には午後には順光のはずだったのだが、実際にはすでに太陽は山の陰に隠れてしまって直射日光は当たっていなかった。
 鉄橋の左右に柵も何にもないのは写真写りがよくてうれしいのだが、よく考えるとちょっと恐いかもしれない(^^;
(浅内-岩手大川間にて 2005.08.12)

 この列車は茂市で折り返し、最終列車でラスト1往復をするのだが、この時点でもう撮影に必要な明るさは得られない。撮影するには、三脚を使って長時間シャッターを切るしか手がない。つまり、駅に停まっているところしか撮影できないと言うことだ。車で来ていると、ついついせっかくだから駅ではなく、駅間の走行写真を撮らなくてはもったいないという考えが働いてしまうのだが、駅でしか撮れないならば話は別だ。で、どうせ駅で撮るならば、撮った後にそのまま列車に乗れる。

これで、一応たびてつと言い訳できる(^^;

 まあそれは半分本気で半分冗談なのだが、一鉄道ファンとしては、やはり列車は乗ってナンボのもんだと思うのである。写真を撮るだけ撮って鉄道を使わないというのは、デパートの食品売り場で試食品だけを食べ散らかして、何も買わないで帰るのに近いものがある気がする。写真だけ撮って列車には乗らず、一銭のお金も落とさないのに、その線が廃止されるとなると文句を言う。そんなてつにはなりたくないものだ。というわけで、茂市で折り返してくる最終列車に押角駅から乗車する。この駅からの利用者があれば、この秘境駅の存続にも非常に微力ではあるが貢献できるはずだ。終点の岩泉まで行っても良かったのだが、あの駅には昼間行っているし、終点での折り返しとなると撮影機会が減ってしまう。そう考えて終点から2つ手前の浅内駅までを往復することにした。往復で640円。元々が40km足らずの路線なので、電車賃もそれほど高くない。さらに日に数本しかない列車の乗車率もほとんどゼロに近い状態なので

どっからみても立派な赤字路線だ…

 まあ、こんな路線がめっちゃ黒字だったら、それはそれで気味が悪いが…(^^; 一日の乗車人数が延べ100人だと仮定すると、筆者は往復なのでそのうちの2人になり、なんと一日の売り上げの2%をも占めてしまうという貢献っぷり! 中央線や山手線で2%なんて、一日中乗っていたって無理だが、ここ岩泉線では一日中乗っていたら

二桁台も夢じゃない!?

 そもそも一日の利用客が100人ってのは始発から最終まで各列車で10人以上の利用が必要なのだが、上り、下りの最終列車を合わせても10人には満たなかった。ってことは、もしかしたら一日の利用客は60人ぐらいかもしれなくて…。

…大丈夫なんだろうか、岩泉線(^^;

 最終列車に乗って揺られながら、岩泉線の将来を限りなく心配してしまった。


 浅内駅で下車し、岩泉で折り返してくる上りの最終列車をバルブ。盛大に出たゴーストがまたかっこいい!(笑)
(浅内駅にて 2005.08.12)

 超秘境の押角駅で一人下車して、列車の後ろ姿を見送る。車が停めてあると頭では理解していても、列車が行った後の暗いホームに立っていると、どうしようもなく不安になる(^^;
 夜の橋は懐中電灯がないとちょっとやばい…かも。
(押角駅にて 2005.08.12)

8/13(土) 岩泉線〜八王子

 昨日、列車で押角駅に下車した後、車で茂市駅まで戻って、昨晩と同じ場所で夜を明かした。茂市駅の近くのコンビニは24h営業なので、食料やトイレの心配はいらない。すばらしい環境だ(笑)
 昨日と同じ0500に起床し、茂市駅のトイレの水道で顔を洗う。駅の近くで夜を過ごして、朝駅で顔を洗っていると、なんか得をしたようなうれしいような気分になる。

これって筆者だけ?

 確認してないが茂市駅も入場券がないようで、昨日と同じく駅員に挨拶をしてホームへ。昨日は見過ごしてしまった山田線の盛岡行き列車を撮影する。が、昨日はキハ52が先頭だったのに、今日はキハ58だった。いくら何でも5両は長すぎると思っていたのだが、始発列車なのでいっぺんに車両を持って行っているだけかもしれない。キハ52とキハ58は混成で運用されているようなので、昨日と組み合わせが違っていても不思議ではない。っていうか、キハって電車と違って1両単位で運用されているのかも。運用ローテも一応はあるのだろうが、キハ52も58もいい加減ご老体なので、その日の調子でコロコロ変わりそうだなぁ。何せ筆者よりも年寄りな車両ばかりだからなぁ。

 岩泉線の始発が来るまでに撮影ポイントを探しに行く。一応昨日一通りロケハンしたのだが、架線のない岩泉線では列車が見えるところであればほとんどの場所がそれなりの撮影ポイントになりうる。昨日は短めのレンズで風景を取り入れた写真が多かったので、今日は望遠で大きく列車を写そうと、カーブのある撮影ポイントを探す。
 が、途中で、ものすごく雰囲気のいい田んぼを見つけてしまい、結局これを取り入れた構図になってしまった。

岩泉線沿線美しすぎ!(笑)

 始発列車の折り返しを中里の駅で迎撃し、茂市駅で再度折り返してくるのを、大俯瞰で狙うために移動。今日は国鉄色ということで、昨日は一人きりだったこのポイントに筆者を含めて3人の撮影者が集まった。せっかくの大俯瞰なので、てっきりみんな広角で撮っているのかと思いきや、かなりの望遠で引っこ抜いていた。筆者もまねをしようと思ったのだが、今日は朝方まで霧が出ていたために相当視程がない。押角駅を引っこ抜くのはちょっと厳しかったので、100mmで手前の部分を中心に収めてみた。俯瞰撮影は普段はあまりしないので勝手がよくわからない。修行が必要だ。


 昨日は盛岡色(≠赤鬼)のキハ52が先頭だったのだが…。後で調べたら、あれって盛岡に1両だけの非赤鬼塗装のレア機だったらしい。あうぅ、ちゃんと撮れば良かった(T_T) この赤鬼塗装のキハ58も結構珍しい気がする。キハ58は各地で国鉄色に塗られてしまっているので、地方色が逆に新鮮だ。
(茂市駅にて 2005.08.13)

 キハ52をアップで撮るつもりだったが、風景がきれいなので、もうちょっと引くか、もうちょっと引くか、とかやってるうちにここまで引いてしまった(^^; 後から来た同業者の人達はもっと短いレンズで引いて撮ってたっぽい。田んぼには国鉄色の方が雰囲気が合う。
(押角駅にて 2005.08.12)

 曇っていてコントラストが低かったので、スライド風にわざと彩度を高めにしてみた。緑が入っていると彩度を上げてもあまり嫌な感じはしないかな。
 1両だっていうのもあるが、ついつい縦撮りしてしまう。
(中里駅付近にて 2005.08.13)

 今日は100mmでちょっと大きく撮ってみた。斜めなのはわざとそうフレーミングしたため。ここだけを切り取るなら、もっと望遠で抜いた方がよかったかも。視程が良ければさらに望遠で押角駅を抜くという手もあるようだ。
(押角-岩手大川間にて 2005.08.13)

 この列車が岩泉に行って戻ってくるのを、再度茂市側に戻って撮影する。今日は昼の岩泉線が走っていない時間帯に山田線の撮影をしてみることにした。と言っても、山田線も文句なしに本数が少ない。ロケハンがてら宮古までドライブしてみたが、茂市から宮古側では蟇目(蟇目)を越えると街になってしまうので、あまり良さそうなところはなかった。
 宮古で観光でもしようかと思ったのだが、車や人が多くてやる気をそがれ、何もせずに茂市に戻ってきてしまった(^^; ずいぶんと時間に余裕ができてしまったが、たまにはのんびりも良いだろう。茂市駅の近くにある温泉センターで風呂に入る。昨日と同じ人工温泉で、これまた露天はないが、かなりゆっくりつかる。
 慣れない運転をしているからか、車中泊では疲れがとれないからか、なんだかとっても疲れている。でも列車が来るので茂市駅へ移動して撮影。撮影してるときは元気なんだが(笑) 山田線もこの昼の列車の後は4時間ほど間隔が開く。岩泉線も16時近くまでないので、しばらく暇だなぁと思っていると、さっきの山田線できたおばちゃんが、岩泉線の連絡がなくて困っていた。地元民なので、岩泉線がないのはうすうす知っていたようなのだが、それにしてもこの列車間隔のあきっぷりは理解に苦しむ(^^;

使って欲しくないのか…?

 聞けばおばちゃんはふたつ先の中里駅まで行きたいだけらしい。うーん、不便きわまりないな(^^; どうせ筆者はこのあと押角の先の山を越えて、さらに奥まで行くつもりだったので、中里駅は通り道である。「よかったら乗っけて行きましょうか?」と提案すると、素直に喜ばれてしまう。いやー、見ず知らずの人にそんなこと言ったらやばいんじゃないかとか、いろいろ心配してようやく口にしたのだが、こうもあっさりと受け入れられてしまうとは…。

都会の人間ってのはいつの間にか人間不信になってるのかもしれない

 そういえばいつも田舎に旅に行くと、地元の人は声をかけてくれて、「車で送っていってやるよ」とよく言われる。勘ぐりすぎないのがよいのかもしれない。生活感あふれる車内をちょっとだけ整理し、おばちゃんを乗っけて中里へ向かう。道中いろいろ話をしたのだが、おばちゃんは東京にいたこともあったらしいのだが、やっぱり東京は暑いとのこと。確かにこっちは東京に比べるとかなり涼しい。気温そのものは30度は軽く超えているのだが、蒸し蒸しする東京の暑さとはやはり違う。しかし、こちらの住人にとっては、去年よりはだいぶ暑いらしく、結構まいっているとのことだった。そんな世間話をしているうちに、あっという間に中里駅に到着。ここからは歩いてすぐと言うことなので、おばちゃんとお別れする。
 しかし、岩泉線、地元住民の足としてあまり役に立ってないぞ(^^;


 キハ52赤鬼3連! 快速リアス。キハ52がいっぱい繋がっているのを見られるのは山田線ぐらいかもしれない。単機もいいが、列車なので連なっているのも捨てがたい。が、両運転台の車両を連結しても無駄が多くてもったいないのも確か(^^;
(茂市-蟇目(ひきめ)間にて 2005.08.13)

 キハ52 147号機 赤鬼色とキハ58国鉄色の混色編成。これでキハ52が国鉄色なら完璧だったのだが。キハ52の国鉄色は盛岡には2両だけなので、そうそう国鉄色では揃わないか。
(茂市駅にて 2005.08.13)

 そのまま押角を越え、山を越え、大川駅の近くの撮影ポイントで昼寝して列車を待つ。正直、途中の山道でかなり寝そうになった(^^; いつでもどこでも寝られるというのが特技ではあるのだがさすがに山道で寝るのは危険だ!

高速道路ではよく寝ているのだがぉ

 いやいや、危ないって!
 Fitの取説を読むと、シートを思いっきりリクライニングさせると後部座席と繋がってフルフラットにできると書いてあるのだが、試してみたがうまくいかなかった。うーむ…。まあ、そんなことは関係なく熟睡できてしまうわけだが(笑)
 午前中は曇っており、一時は小雨も降っていたのだが、いつの間にかこれでもかというぐらい晴れており、腕を焼かれる感覚で目を覚ます。涼しいと書いたばかりだが、直射日光はやっぱり暑い。今回の撮影ポイントはトンネルからの飛び出し直後の鉄橋という、筆者が一番好きなシチュエーション。トンネルと鉄橋という二大ヒーロー夢の競演だ! 青空がきれいだったので広角で狙うか、望遠で切り取るか、列車が来る直前まで悩んだのだが、昨日撮ったのがほとんど広角だったので、今回は望遠にすることにした。といっても100mm。やっぱ列車が小さくなってしまう(^^; うーむ、なかなか思うように撮れないものだ。
 岩泉で1時間の停車があるので、昨日と同じく岩泉駅まで行って撮影。今日も昨日の委託駅員のおばちゃんに挨拶して駅の中へ。

ああ!止まっている列車ってなんて撮影しやすいんだ!(笑)

 しかもバリ順光だし。岩泉線で一番いい撮影ポイントは岩泉駅かもしれない(^^;
 岩泉駅からの上り列車は、向こう側が見える小さなトンネルで狙う。トンネルの向こうに列車がやってきて、一両分の長さしかないトンネルを抜けて、カーブを曲がっていくというシーンをコマ送り状態で連射する。うむうむ、なかなかうまく撮れた。と思ってプレビューを見て唖然とした。

わざわざ三脚立てて撮ったのに、めっちゃ曲がってるよ!(T_T)

 三脚を立てたところが坂道の途中で、しかも低く立てたためにファインダーをのぞきにくかったのが敗因か。いつも手持ち撮影で三脚を使わないので、たまーに使うと失敗するということなのだろう。カメラに水準器つけるか…。


 ←左
 トンネルから飛び出して鉄橋を渡る赤鬼色のキハ52 155号機。盛岡所属のキハ52の中でもっとも番号の大きい車両だ。いろいろ構図に悩んで結局こうなったのだが、今でも広角で青空と川を入れた方がよかったかもしれないと悩んでいる(^^;
(押角-岩手大川間にて 2005.08.13)

 ↑上
 岩泉駅で発車を待つキハ52 155号機。個人的には国鉄色よりも岩泉がよく似合うと思う赤鬼色。岩泉駅が一番光線状態がいいってのは、ちょっと悲しい(^^;
(岩泉駅にて 2005.08.13)

 ↑上
 岩泉駅の逆側から夕日に浮かび上がる山々とキハ52。岩泉線は本当に山のきれいなところだ。
(岩泉駅にて 2005.08.13)

 →右
 このあたりからいよいよ山に挑んでいく。三脚を使って撮っているのに、どうしてこんなに傾くのか?(^^; いや、カーブでのスピード感と迫力を強調するためにわざと傾けているのですよ!?
(二升石-浅内間にて 2005.08.13)

 後は昨日と同じく最終列車に乗車して、長時間シャッターで撮影。やっぱり気に入ってしまった押角駅から乗車し、昨日よりひとつ先、終点からひとつ手前の二升石駅まで往復する。値段は昨日と同じで640円なり。今日は土曜日ということもあって、昨日よりは乗客が多かった。

多いと言っても四人…しかも、地元民ではなく、全員てっちゃんだった(笑)

 青春18キッパーかな? JR全線乗りつぶしのために、この盲腸線である岩泉線を制覇中と見た。
 二升石駅でバルブ撮影をし、岩泉で折り返してきた最終列車に乗車。そして押角駅でついに今回の最後の撮影となるバルブ撮影を行った。まるまる二日間、始発列車から最終列車まで、すべての列車を撮影した岩泉線。キハ52という筆者の一番好きな車両が走っているのでもともと印象が強かったのだが、今回の訪問でますます忘れられない路線となった。押角駅のあまりにもすごい秘境っぷりは、冬にも来てみたいという、間違いなく無謀な考えを起こさせる。旅日記17には次に訪れるのは岩泉線の廃線が決まったときだなどと書いてあるが、これはもしかすると結構通うことになったりする路線かもしれない。
 今回、たびてつとは呼べなかったかもしれないが、あえてこの日記をたびてつのナンバリングにした。移動手段は車だったが、お気に入りのキハ52とかけがえのない時間を共有した今回の撮影旅は、筆者にとって間違いなくたびてつであった。


 さすがに降りる人のいない押角駅。まだ空には青さが残っている。この駅で乗降する客を、運転手や車掌はどう思っているのだろうか。ちなみに朝の列車で、この駅で降りているてっちゃんを見ました(笑)
(押角駅にて 2005.08.13)

 二日間本当にありがとうございました。感謝を込めて一礼。停車中、発車後、さらにその後筆者だけの撮影の三枚を合成。発車したときシャッターを切るタイミングが遅くてテールランプが繋がらなかった。残念。
(押角駅にて 2005.08.13)

蛇足
 最終列車を降りた後、渋滞をおそれてそのまま帰路についた。途中2hほど仮眠を取っただけで東北道をひたすら南下したのだが、道路が空いていたのもあって眠いの何のって! 窓全開にして大声で歌いながら運転してても寝てしまうほどだぉ あまりの眠さに、ほとんど全てのパーキングとサービスエリアに各駅停車して気を紛らわさなければならなかった(^^;
 その後、無事に東京までたどり着いたはいいのだが、首都高で逆回りしてしまうわ、中央道の下りが混んでて下道を通ったらなぜか東京を縦断してしまったりと、いろいろ大変なことになった。
 やっぱレイル&レンタカーがいいね。次回はそうしよう。

4日間の総走行距離 1632.7km

2005.08.18記