鋼鉄の愛馬と魔法の書が君を四大陸へいざなう。
知らない場所、初めての街、さまざまな出会いが軌道の先にある。
シャレてる暇はない。さあ、出発の時間だ!
第0017号
2002.09.14-09.16

2002.09.14-09.16

・国鉄色のキハを求めて600km 〜山田線・岩泉線・花輪線・磐越西線〜


 湯瀬温泉駅を発車した国鉄色のキハ52。後ろは国鉄色のキハ58。花輪線の沿線には地元の人たちの手によって花がたくさん植えられていて気持ちよい♪
(湯瀬温泉駅にて 2002.09.15)

←左
 夕刻に出発を待つ、岩泉線のキハ52。17時台でこの日2本目の列車とは恐ろしいダイヤだ…。
 …だが、あえて岩泉線に乗るのが「てつ」たるもののこだわり。
(岩泉駅にて 2002.09.14)

9/14(土) 菊名〜東京〜盛岡〜宮古〜小本〜龍泉洞〜岩泉〜盛岡

 筆者の旅にしては珍しく一ヶ月も前から構想が練られていた東北旅行が、いよいよ現実のものとなる日が来た。今回の道連れは筆者を含めて四人。久しぶりの大所帯だ。しかし、旅のコンセプトは変わらない。今回初参加となる、山崎、わたりさん両氏には特に

いきあたりばったりの楽しさを伝えたい!

 3日目のSLの指定席こそ押さえてあるものの、それ以外の列車、ホテルに至るまで「柔軟性重視」の予定となっている。大丈夫、時刻表があれば!

 東北へはすっかりおなじみのやまびこ・こまち1号で旅立つ。いつものように横浜線の始発列車で東京駅へ向かう。列車が発車する1時間も前に到着してしまうわけだが、連休初日の下り新幹線は混雑するので、早めに並んでおく必要がある。幸い、東京駅に6時前に到着できるエリアは限定されるため、大抵この時間であれば列の先頭に並べる。
 余裕をかましながら新幹線ホームに行くが、改札前の爆発的な混雑を見て、余裕が吹っ飛ぶ。人が多すぎて自動改札がパンクし、駅員が「自動改札に切符を通さずに通ってください!」と叫んでいる。お盆と暮れの帰省ラッシュ以外でこんな光景を目にするのは初めてだ。ちょっとマズいかなと思いながら、急いで乗車口へ向かう。
 盛岡までしか行かないので、やまびこの自由席禁煙車、いつもの1号車へ向かう。

しかし、先頭車両が3号車!

 電光掲示板の表示がミスっているのだろうか? しかし、目的の列車の2本前、まったく同じ編成の臨時列車の停車位置から見ても、ここが先頭の自由席であることは間違いない。多少ひっかかるものがあったが、間違っていないだろうと判断して並ぶ。どうやらいらん心配だったようで、いつものように先頭に並ぶことができた。とりあえず、盛岡まで立っていくという最悪のスタートだけは回避できたようだ。
 落ち着いたところで、各位の現在位置を確認し、全員が集合時間に間に合いそうなことを確認する。このメンツ、とんでもなくルーズな人がいるわけではないので助かる。
 30分もすると列がずいぶんと長くなってくる。やはりいつもより人が多い。夏休みの分散傾向の被害が、9月の3連休に及んでいるのかもしれない。
 で、待ち時間に時刻表を眺めていて、上記の車両番号の謎が解けた。どうやら先週から1〜8号+11〜16号車という間が抜けている車両番号から、3〜10号+11〜16号という連番に変更されたようだ。まったく、ややこしいことをしてくれる。
 全員集合。各自駅弁を買い込んで列車が発車。東京駅ですでに座りきれない人が車内の通路にまであふれている混雑ぶり。さらに上野で乗客が追加される。しっかし、上野から乗ってくる人の気が知れない。
 特に何もイベントはないのだが、特に爆睡するメンバーもおらず、だべっているうちに盛岡に到着。
 さて、在来線ホームに行って乗り換えだ、と思って列車を降りたとき、反対側ホームの列車に目がとまった。なんということはない。今乗ってきたやまびこと同じE2系の新幹線だ。…が、なんか違和感を感じる。車体中央のラインってピンク色だったか? さらに車体横のエンブレムも見たことのないものだった。新しい塗装か、あるいは改造車両かな? 車体番号を見ると1000番台だったので、どうやら改良車っぽい。
 「測定器が乗ってるぞ」「シートにビニールがかかったままだ」 なるほど、どうやら新型車両の試運転中のようだ。
 ふと気づくと、筆者の周りをカメラを持って走り回っている人が数人いる。そのうちの一人が、なれなれしく筆者に声をかけてくる。「○○の編成ですね」 ○○の部分は数字の羅列で筆者には意味不明だった。ちょっと社会的に適応できていなさそうな、ちょっと普通じゃない、あまり友達になりたくないような人物だ。
 こういうのがいるから「てつ」がみんな変な人だと思われるんだよなぁ。ま、確かに、そういう人も多いけどね。大多数は善良な市民なのだが…。
 ま、でも知識だけなら賞賛に値する人種である。どうやらこの車両、

八戸まで行く新幹線のニューフェイス 「はやて」

らしい。阿瀬見の話だと、飛行機と競争するため、300km/h超運転を目指しているらしい。そう言われて、従来車両との差分を見ていくと、いろいろと改良点があることがわかった。まず、速度を出すためか、パンタグラフの台が大きく小型化され、さらに空気抵抗を低減するようになっている。窓は景観をよくするために大きくなっている。そのほかにもいろいろ相違点がありそうだ。
 いやー、おもしろいものに出会った♪ この飛び込みイベントのおかげで、おもわぬ収穫を収めた筆者達は、眠気も吹っ飛び、在来線のホームへ向かう。
 今回の目的のひとつである、国鉄色のキハが走る山田線のホームだ。この時間にうまく接続する普通列車はない。山田線は本数が少なく、国鉄色のキハに出会うのは大変だ。
 新幹線の中で、皆の承認を受けて、目的地は龍泉洞に決定した。ま、ほとんど筆者が独断で選んだ場所だけどね。龍泉洞はへんぴなところにあるため、行くだけでも大変だ。山田線の普通列車を乗り継いでいてはたどり着けないので、イベント列車の「ぐるっとさんりくトレイン」を使う。名前の通り、三陸をぐるっと回る列車で、

盛岡発−盛岡行!

 盛岡駅の列車案内板に「盛岡行」の列車があるのは、不思議な感じがする。盛岡−宮古−釜石−花巻−盛岡という経路をとるわけだが、主要な観光地のある駅で長時間停車を行うので、まるまる一日かけて三陸を小旅行できるという変わった列車である。プランを練るのが面倒なお父さんは、この列車(もしくはJR)の作戦に乗せられてみるのも良いかもしれない。
 もちろん筆者達はそんな他人の決めたスケジュールに従って旅をするつもりはない。宮古でこの列車とおさらばして、龍泉洞に向かうわけである。
 3両編成で自由席は1両だけだったが、早めに着いて並んでいたため、楽勝で座れそうだ。イベント列車ということで、観光客と、「てつ」の姿が多い。
 筆者達の集団も、筆者以外は一眼レフカメラを持っているため、思いっきり「撮りてつ」に見える。

え? 筆者は何故一眼レフを持ってないかって?

 前回の旅日記で、「撮りてつ」には銀塩カメラが必要だと書いたのだが、やっぱり邪魔なので置いてきたのだ(^^;
 デジカメだって使いこなせばなんとかなる!…と思いたい。とにかく機動力重視の筆者は荷物が増えるのが嫌いなのだ。今回は2泊3日ということで、ノートPCも置いてきた。着替えと時刻表だけなので、小さなリュックひとつだけだ。
 わたりさんのリュックはひとつなのだが、カメラやらレンズやらがいっぱい入っていて、10kgはくだらないだろう…。そんな重いの持って歩けないよぉ…。
 ホームで待っていると、いい歳をしたおっちゃんが、DVカメラをつけた三脚をもってうろうろしていた。どうやらこの人も「てつ」のようだ。カメラを持っている筆者達を仲間だと認識したのか、いろいろと話かけてくる。筆者達、人畜無害に見えるらしく、よく話しかけられたり、道を聞かれたりする。これも旅の楽しみのひとつである。ま、さっきのように変な人には話しかけてきて欲しくないのだが(^^;
 この人、何度かこの列車の撮影を試みているのだが、過去2回は天気に恵まれず、今回が3度目の正直らしい。

だいじょうぶ! ここに晴れ男がいます!

 今日は白い雲が多少でているが、雨の心配はなさそうな青空。雲ひとつない快晴よりも、白い雲があったほうが写真にメリハリがついておもしろい。撮影には絶好の天気だ。おっちゃん、うちらがいれば大丈夫。思う存分リベンジを果たしてくれ♪
 入線してきたぐるっとさんりくトレインに乗り込み、車内をひととおり見学する。指定席である先頭と最後尾の車両の一部はハイデッキになっており、見晴らしが良さそうだ。運転席の真後ろの席なんか最高だろう。今度、機会があったら指定席を取って乗ってみたいものだ。
 山田線は確かに山の中の自然いっぱいなところを走っている。が、車窓は、山とトンネルばかりで、意外とおもしろくなかった。運転席の後ろならおもしろそうだけどなぁ。
 宮古に到着すると、列車は一旦車庫に入るとのこと。このあともこの列車に乗る人も全員下ろされる。ちょうど昼なので宮古で昼御飯を取ることにする。駅の周りで飯を食える店を物色する。宮古に来たことがあるという山崎によると、ずいぶん景色が変わっているらしい。で、前に来たのはいつ? 中学校の時?

そりゃ、15年経ってりゃ変わるわい!

 駅の近くの食堂に考えなしに乱入。こういうとき、このメンバーは「ここにしようぜ!」と言うと、「いいよ」と簡単に決定する。逆に「ここにしようぜ!」と誰も言わないと、うだうだしてしまうのだが…(^^;
 店に入ると、客の食べているラーメンが否応なしに目に入る。でかい器には毛ガニが丸ごと乗っかって、乗り切らない脚がはみ出ている!

すげぇ!誰か注文するのだぁ〜!

 筆者は胃袋が小さい上に、先ほど駅弁を食べてしまっておなか一杯なので遠慮して置く(笑)
 メニューを見ると、ほかにもいろいろすごいのがありそうだったが、やっぱりあのラーメンがすごい。ちょっと打診してみたが誰もそれには手を出さなかった。逆に筆者も何か食えということで、めかぶそばを注文するハメに…。いや、だからお腹一杯なんだってば! 「残ったら誰か食うから」って、そりゃそうかもしれんけど…。
 胃袋充填率120%、ほぼ限界値まで達しながらもなんとか完食。しかし、二色フライを頼んだ阿瀬見とわたりさんもかなりいっぱいいっぱいな様子。もしそばが余っても誰も食べてくれなさそうだ(^^; おいしかった、そしておもしろかったので、この食堂はアタリ。次もここにしよう。ま、次いつ来るかかなり不明なので、そのときまで街がこのままという保証はないけどね。
 お腹が落ち着いたところで、筆者は逆につらくなったが、三陸鉄道のホームへ移動。三陸鉄道で5つめの小本(おもと)駅まで行って、そこからバスで龍泉洞に向かう。面倒だがこれが最短コースっぽい。
 三陸鉄道は焦げ茶色のレトロな車両。すべてがこの車両なわけではなく、これはイベント列車。内装も大正ロマン風になっていて、トンネルにはいると照明がいい感じだ。が、ちょっと席が狭い。三陸鉄道と聞くと、海沿いなのかと期待するのだが、実は海のすぐそばを通るわけではなく、意外と遠い。降りる小本駅近くでようやく遠くに見えるという程度だ。あとはトンネル。うーむ、山田線といい、このあたり、トンネルばかりだな。
 小本駅はちゃんとした駅舎のある駅だったが、いまは無人のようだった。小さなロータリーには昔懐かしい「つばめ」のJRバスが待っていた。龍泉洞までは600円。10kmほどの道のりをうとうとしながらバスに揺られて龍泉洞前に到着。一応観光地なので、多少の人がいる。いや、一応なんて言ってはいけないのか。

秋芳洞と並ぶ日本3大鍾乳洞のひとつ

である。あとひとつは高知の龍河洞というらしいのだが、これは聞いたことない。一位の秋芳洞と二位の間には大きな差があるように思える。
 ぐるっとさんりくトレインの中でGETした割引券により1000円のところ840円で入場。見回るのに1時間ぐらいかかるということなので、コインロッカーが安かったのもあって荷物をロッカーに放り込む。
 鍾乳洞の中はひんやりとしていて、入り口からいきなり地下水脈がお出迎え。通路は狭い。こりゃ荷物持ってたら通れないよ(^^; 荷物を置いてきたのは正解だった。秋芳洞は大味なぐらいでかいのだが、龍泉洞は初っぱなから屈まないと通れない。ま、でかけりゃいいってもんじゃないけどね。
 照明が暗めになっているため、まともに写真撮影ができない。そしていよいよ龍泉洞の誇る地底湖のお出ましだ! 最深部は120m。世界最強の透明度41mをもってしても、底まで見通すことはできない。これはとても地上では見られない、神秘的な透明感だ。ああ、吸い込まれそうだ…。年中水温8度のここに沈んだら腐敗も進まないので、死体はずっと浮かんでこないんだろうなぁ。
 観光客用に道や階段が整備されているのだが、それでもなお複雑な洞窟は人の進入を拒む。

体力に自信のない方はこの出口より出られます

 わざわざこんなショートカットが途中に設置されているのだ。その先の急な螺旋階段に挑むのは、元気が有り余っている子供と無謀な大人だけ。無論筆者達は後者。突撃あるのみ!
 どうやってこんなところに螺旋階段なんか作れたんだ!? と思うような狭い通路を身をくねらせながら昇っていく。この鍾乳洞、上下方向にかなり大きく、複雑な構造をしている。昇りきったところから、地底湖を見下ろす。断念して昇ってこなかった人には見られない景色だ。ちょっと得した気分♪
 鍾乳洞内に住むコウモリは天然記念物。で、その展示(?)している場所では、生コウモリがぱたぱたと飛んでいる姿をみることができる。照明が点いたり消えたり…? その度にコウモリが飛ぶ?
 ああ!暗がりの中に設置したライトを順番に点灯することで、コウモリを追い立てているのか!

ストレスで死ぬぞ!

 天然記念物に指定されてしまったのがその身の災難。哀れなコウモリに心の中で合掌して、鍾乳洞おしまい。
 洞窟の空気に慣れた体には外は蒸し暑く、眼鏡が曇る。
 さて、入場券にはもうひとつ券がついている。龍泉新洞の入場券だ。道路を挟んだ反対側に龍泉新洞科学館がある。鍾乳洞の中に博物館を入れてしまおうという、少々失敗気味の試み。やっぱり、博物館のところはつまらなかった。が、鍾乳洞のほうは、龍泉洞(旧洞)の方よりも立派なものだった。地底湖、地底河がない分、水に洗い流されることがないので、石筍などが成長しやすいのだろう。未だに研究中となっている、立入禁止の札の奥には、かなり大規模な鍾乳石群が見えた。これらが一般に公開されるようになるといいなぁ。
 道順に従い、新洞も終了。が、出てきた場所は入り口と同じではなかった。突然道路の歩道に出る。

どこでもドア?

 一瞬、どこに出たかと思った(^^; 方向音痴の筆者は、どちらに行けばいいのかよくわからなかったのだが、皆が右の方に行くのでついていく。100mほどで先ほどの入り口に到着。出口に看板ぐらいつけておかないと、迷う人が出るぞ…。
 なんだかんだで結構な距離を歩いたので、ちょっと休憩。龍泉洞ビールなるものをいただく。薄いピルスナーといった感じで、さすが透明度41mの水である♪

 ミッションをまたひとつクリア。普通の人ならば、来た道と同じ道をたどって帰るわけだが、筆者達は普通の旅行をしているわけではない。岩泉駅に抜けて、岩泉線に乗って盛岡に帰るのだ。同じ道を通るというのはどうにも損した気がしていけない。
 来るときに乗ってきたバスの終点が岩泉駅だったので、再びバスに乗ればいい。が、そこにローカルの罠!

乗ってきたバスが最終便である

 よって、歩いていく。もちろん歩ける距離だと踏んでのことだ。時刻表によるとここから岩泉までは15分程度。田舎なので信号による停車がないとしても数キロの距離のはずだ。確認のため、おみやげも買ってないのに、お土産屋のおばちゃんに、どのぐらいかかるかを聞いてみると30分との回答。うむ。妥当かな。
 何気なしに「あっちですよね?」と指さすと、おばちゃんが差したのは逆の方角。あれ?そっちからバスに乗って来たんだけど…。単純に乗ってきたバスの進行方向に進めばいいと思っていたのだが、実はバスは鍾乳洞に寄り道するような形で来ていたのだ。一旦来た道を戻り、途中から駅の方角へ曲がるらしい。…危ね〜、遭難することだったよ。
 列車は1時間半以上あとだったが、何があるかわからないので早めに移動を開始する。道路の歩道を降りて、渓流沿いの遊歩道をゆっくりと歩く。言われた通りの信号で折れ、バス停を見つけて道が間違っていないことを確認。お、珍しく迷ってないぞ〜☆
 その15分後には迷っていた。適当に曲がった先に、どうにも駅の気配がないので、地元の人に聞く。聞いた本人がうまく説明できていなかったのだが、なんにしても方角が違うらしい。方角を修正して歩き出す。そのうち看板があるだろう。
 お土産屋のおばちゃんが言った30分はとうに過ぎてしまったが、1時間弱で駅を発見。ちっさい駅だと思っていたのだが、意外と大きい。一応岩泉線の終着駅だからな。駅の駐車場で遭遇した巨大猫。でかい…。駅までの距離、駅舎、猫…。

岩泉ではいろいろなものが筆者達のスケールよりもちょっと大きいのかもしれない…

 すでに列車は入線済み。盛岡色のキハ52が1両のみだ。この岩泉線は山田線につながる盲腸線(どこにも抜けられない路線)なので、当然山田線よりも本数が少ない。1720発のこの列車が、この日2本目の列車なのだ。筆者が見た中で、いままでで一番本数が少ない路線だ。すでに日は傾いており、写真撮影するにはぎりぎりの光量になっている。まともに撮影するとしたら朝一番の列車が唯一のチャンスといえる。泊まりがけでもなければ撮影できないし、もし撮影したら撮った列車には乗れないわけだから、なんと9時間半待ちということに!
 恐ろしい…。車で移動しての「撮りてつ」は、個人的には嫌いなのだが、岩泉線ではこの手段を取らないと大変なことになる。でもやっぱり車は邪道だし…。列車で来て泊まって、ただ一往復の列車を撮影して、9時間半待って帰る。…絶対やりたくないのだが、どこかにちょっとだけやってみたい気持ちも。

でも、次に来るのは岩泉線の廃線が決定したときだろうな…きっと

 沿線の景色はやはりトンネルが多いのだが、山と谷がダイナミックに広がっていておもしろい。こんな場所は写真撮影は難しいかもしれないが、列車から見るにはよい☆
 終点の茂市で盛岡行きに乗り換え。このころにはすっかり日が暮れていた。
 やってきたのはやはり盛岡色のキハ52。結局今日は目的のひとつだった国鉄色のキハには乗ることはできなかった。よし、明日こそは!
 盛岡行きの列車の中で時刻表をめくると、とんでもないことに気づく。

盛岡から宮古に抜けるには今日の列車しかない!

 明日の夜には会津の飲み屋で飲むことに決めているので、宮古に着くのが昼ではとても途中下車している時間はない。…ダメだこりゃ。ま、ダメならしょうがない。

よし、明日は花輪線に変更〜♪

 旅はこうでなくっちゃね☆



 盛岡駅で見かけた、試験運転中の「はやて」。八戸まで延伸する東北新幹線の新型車両である。車体中央のラインが赤からピンク色に変わった点にしか気づかないのが一般人。窓やパンタグラフなど、数え切れないほどの改良点に気づくのが「てつ」。
(盛岡駅にて 2002.09.14)

 リゾートトレイン、「ぐるっとさんりくトレイン」。急行車両のキハ58・28の改造車両で、一昨年まではKenji号として走っていたものだ。名前の通り、三陸をぐるっと回る、盛岡発−盛岡行のおもしろい列車。丸一日観光できるようなスケジュールで運転されるので、ちょっとしたパック旅行を楽しめる。指定席である1・3号車は一部ハイデッキになっているので是非狙ってみたい。
(宮古駅にて 2002.09.14)

9/15(日) 盛岡〜小屋の畑〜湯瀬温泉〜盛岡〜仙台〜会津若松

 今日も始発の時間に合わせて宿を出る。昨日は飛び込んだ飲み屋で少し飲んだだけなので二日酔いのメンバーもおらず、本日も全員定刻通りに集合できた。天気は晴れ。今日も大丈夫そうだ♪
 ちょっと早めの駅に着いて、入線してきた下りのはくつるを撮影。ふと気づくと、筆者ら以外のてつも元気に活動を始めていて、当然のようにはくつるにレンズを向けていた。うむ、元気が何より。

あ、昨日から見かけていた人がいる(笑)

 昨日、筆者達と同じルートで旅をしていた赤シャツのてつは、今日も筆者達と同じような行動計画だったらしい。
 花輪線の始発列車、キハ52・58コンビ大館行は、またしても国鉄色ではなかった。天気はいいのだが、列車の巡り合わせは悪いようだ。
 始発列車に乗っている人を見回すと、てつの姿があちこちに…。やっぱり始発でGOはてつの間では常識なんだろう。昇ってきた朝日に照らされた車両の影が、収穫前の水田に投射される。列車の影に窓の切り抜きができるのは、この朝日と夕日が低い位置から差し込むわずかな時間だけだ。右手で作ったキツネの影絵だって田んぼに写る。
 そんな懐かしい田園風景の駅に途中下車。以前来たときに目星をつけていた小屋の畑駅だ。一緒に乗っていたてつ達はさすがにここでは降りない。
 列車を降りるとあたりは静かだ。こんな無音、都会ではあり得ない。いや、かすかに自然の音が聞こえるのだが、それは聞こえていながら聞こえていない、自律神経に障るような音ではない。見上げると視界一杯に広がる青空。自分が自然の中にとけ込んでいくような、さわやかな感じだ。田舎はいいねぇ☆
 当然の事ながら(?)特に何か目的があってこの駅に降りたわけではない。駅の周りに散歩に出かける。
 田んぼがあって川が流れていて山が見える。もちろん民家も国道も、そこに高速道路だってあるが、こんなに視界の開けた場所は都会にはない。朝露に濡れる草を踏みしめて散歩する。これだけでも十分途中下車する価値がある。
 と、踏切の警報機の音が響く。あれ?まだ列車は来ないはずなんだけど…。先ほど時刻表は確認していたはずなのだが、しかし間違いなく列車がやってくる。しかも国鉄色のキハだ!

線路に向かって走る一団(笑)

 すでに時代遅れの旧式とは言っても、さすがに列車である。運動不足で重装備の筆者らよりは十分に速い。ろくに線路まで戻れずに、遠くから慌てて撮影するのが精一杯。
 去っていった列車を見送ってから時刻表を見ると、反対方向の列車を一本見過ごしていた。がーん! しかも、どうしてこういうときに限って、国鉄色が来るんだ…。ついてない。
 かなりの後悔があったが、まだ一日は始まったばかりだ。そのうち会えるだろう。
 散策を再開。都会からやってきたカメラマン達は、気づけば朝からのわずかな時間に大量のフィルムを消費していた。田舎の風景が珍しく、懐かしくてシャッターをばしばし切っている。

明日の分のフィルムが足りない!

 阿瀬見は前々回の反省から、「これだけあれば絶対大丈夫!」というフィルムを用意していたのだが、それでも足りないらしい。山崎はカメラの電池の消耗が、「カメラ壊れてるんじゃないの?」というぐらい激しく、こちらも補給が必要そうだった。
 そこで、まだ未定だった本日の予定を立て始める。今日の夜は会津の飲み屋に行くのが決まっている。計画はそこから逆算していけばよい。そこに仙台に寄る計画を盛り込むことは可能だった。というか、楽勝。仙台にはヨドバシカメラがあるのでそこで補給を行うことになった。

田舎に来てるはずなのに、毎回ヨドバシに寄ってないか?

 補給のめどが立つと、シャッターを切るのにためらいはなかった。…君ら、撮りすぎ!
 が、気づけば筆者もデジカメのメモリーが心許ない。撮っている枚数が多いわけではない。だが、今回から最高解像度での撮影を行っているので、従来よりも撮れる枚数が4割減っているのだ。ノートPCを持ってきていないため、記録はすべて半導体媒体に保存しなければならない。持っているメディアを総動員してぎりぎり。…ヨドバシでコンパクトフラッシュ買えばいいか〜。筆者も現地調達を決め込んだ♪
 次の列車でさらに内陸へ。湯瀬温泉を目指す。今回も国鉄色に巡り会えない。む、ヤバいな。
 湯瀬温泉は数年前に佐藤君とお花見をした駅だ。今日は桜の木は青々と葉を茂らせていた。
 湯瀬渓谷をハイキング。前回、遊歩道への入り口にある橋では、録音のウグイスの声にだまされた。

うわ、今度はカッコーのだまし声!
季節でちゃんと変わってる!(笑)

 恐るべし湯瀬温泉…。
 9月にカッコーというのは微妙にずれているようだが、まだ夏バージョンなのだろう。こうなったら四季をすべて聞いてみたい気がするぞ。
 湯瀬渓谷はトンボであふれかえっていた。どっちを見てもトンボ・トンボ・トンボ。渓谷の標識にトンボをあしらったデザインを用いていることから、トンボが多いのだろうが、この数は異常だぞ…。
 人に慣れている、というか、人を危険な存在だと認識していないトンボは、さわっても逃げない…。上野のハト並みの無防備さ。ちなみに、トンボは真後ろに視界がきかないので、後ろからさわると、ぜんぜん気づかないぞ。
 バシバシと遠慮なしに切られる一眼レフのシャッター音を引き連れながら渓谷をあるく。そろそろ対向列車の時間だ。撮影ポイントまで急がないと!
 ちょっと走って鉄橋のあるところまで行く。うむうむ、ちょっと記憶が曖昧だったが、ちゃんと記憶通りのところにあったな☆ ただ、桜の季節と違って、木々の葉が撮影ポイントを覆っていた。しかたなく自動車用の橋の上から撮影を行うことにする。

…デジカメ起動が間に合わず撮影失敗(T_T)

 やっぱ踏切がないと接近がわからないから撮れないや…。一眼レフの他3人は撮れたかなぁ?
 ここで一休み。秋のさわやかな風にあたって、体温を下げる。機動力重視装備の筆者はともかく、重装備のわたりさんには渓谷の道のりは厳しかったらしく、かなり疲れている様子。が、それを口に出さないのはさすがオトナ。わたりさんの回復具合と時間の妥協点で再出発。といっても、今度は戻るのだ。
 戻る頃にはちょうどホテルをチェックアウトしたらしい観光客らが渓谷の入り口をうろうろしていた。その中の女二人旅風二十台前半の人に、写真撮影を頼まれる。デジカメ、普及したなぁ。そして阿瀬見の方は使い切りカメラ。
 なんか阿瀬見の機嫌が悪い。何ごとかと思ったら

こんなカメラで写真が撮れるかぁ!

 うーん、こだわり。じゃぁ、自分のカメラで撮ってやればいいじゃん。「あとで写真送るから住所教えてくれる?」 ああ、高校の時、写真部の撮影旅行先でナンパの時の常套手段だったなぁ(笑) ええ、一応写真部でした。野球ばっかりしてましたが(笑)

 温泉街まで戻ったところで、公共の温泉に入る。一回200円は、東京の銭湯の半額以下。しかも早朝6時より入浴可能とはすばらしいかぎりだ。ほぼ貸し切り状態の風呂で疲れを癒す。
 さて、風呂上がりと言えばビール! ビールといえばヱビス! 隣の酒屋で調達だぁ!

って、酒屋やってねー!

 営業時間にはなっているはずなのだが…。ああ、駅のホームでのんびりとヱビスをいただくという野望が…(T_T)
 列車まであと30分ほどあった。駅ホームに出ていろいろ撮影。花輪線沿線にはたくさんの花が植えられていて、とてもきもちよい。湯瀬温泉駅にも立派な花壇があり、知識がないのでコスモス以外は名前も知らない花がきれいに咲いていた。花輪線、人の温かみがあるいい路線だなぁ♪
 ここから盛岡に引き返すのだが、盛岡から来た大館行きの列車が国鉄色だった…。そして、筆者らの乗る盛岡行きは盛岡色…。

国鉄色のキハについに乗れなかった(T_T)

 おかしいな、今回の最大の目的って、国鉄色のキハに乗る事じゃなかったか?
 みんながうとうとと列車の揺れを堪能しているなか、一人花輪線の車窓を眺めながらリベンジを誓った。

 盛岡駅から仙台へやまびこで一駅。キハの後だと新幹線の速さに改めて感心する。45分で仙台到着。
 早速ヨドバシカメラに行く。が、改装されてカメラやフィルムが売っていない。新しくできた館のほうに行かないとダメらしい。再び駅の通路を通って反対口へ。そこに駅の階段に直接接続しているヨドバシカメラがあった。うわ、こりゃ便利だぁ!
 フィルムもメモリも十分に補充した。これで明日は万全だ☆
 再び新幹線、今度は各駅停車のやまぎこで郡山へ。それにしても、やまびこ・こまち、やまびこ・つばさ、各停やまびこ、なすの、あさま、あさひに加えてはやてまで増えたら、東京−大宮間のダイヤがパンクしそうだなぁ。どうするつもりだろ。

JR東日本の新幹線ネットワークには重大な欠陥があるような気が…

 郡山−会津若松間は電化されているため、ひさしぶりの電車。磐越ライン455系だ。JR東日本の車両で、車体のデザインに型番を取り入れている数少ない列車だと思う。磐越東線は電化されているためあまり興味がない。暗くなってきて景色も見えなくなったので、あっさりと寝る。
 会津若松に到着。宿に荷物を放り込んで、すぐにロビーに再集合。これからお気に入りの飲み屋に繰り出すのだ。SLと並んで今回の目的のひとつである。
 その前に、明日の帰りの新幹線の指定席をGETしに緑の窓口へ。初日の行きの混雑から考えて、明日の帰りもラッシュが予想できる。幸い、SLに乗るために新潟駅に到着する時間はわかっている。その前後の新幹線指定席を片っ端からあたっていく。が、どれもボックスで確保することはできなかった。…ま、そりゃそうか。座れないという最悪の事態を避けるために、バラバラで席を確保。どうせ帰りはビール飲んで寝るだけだから…。自由席に並んでまとまって座れたなら、指定席は棒に振ればよい。どうせ指定券は、三連休パスを使えばタダなのだから。

 飲み屋に向かって出発。お城の方にあるので、駅からは1.5kmほどの距離がある。荷物はすべて宿なので、そう大変なことではない。以前、阿瀬見と一緒に行ったことがあるのだが、いまいち場所をはっきりと憶えていない。阿瀬見も憶えていなさそうだったが

行けばなんとかなるだろう!

 という安易な気持ちで前進し…

さくっと迷う!

 うん、迷うと思った(笑)
 ちょうど交番を発見し、あきらめて道を聞こうと思ったのだが、交番に5人ものお巡りさんがいて、ちょっと躊躇する。交番って、お巡りさんがいないと「使えね〜」と思うが、いっぱいいすぎると入りづらい…。
 ちょっと腰が引けたが、やっぱり道がわからないので、勇気を出して交番へ。入ると、当然の事ながら、お巡りさんの10の瞳がこちらにあつまる。おお、後ろめたいことはなにもしていない(はず)なのだが、なんかこわい。
 店の名前は「籠太」とわかっているので、訊ねる。結構近くまでは来ているはずなのだが。「知らないなぁ」とお巡りさん。ああ、やっぱりわからないのか…。とちょっと残念に思うが、かといって

ああ、知ってる知ってる。これから行くから一緒に行こう

 なんて言われても困るが。
 棚からハローページを引っ張り出してページをめくる。さすが、プロ。検索手順が適切だ。一分もしないうちに籠太の住所が判明。若い婦警さんが地図を検索して場所を特定。近いことは近いが、もう少し距離があった。婦警さんに道を説明してもらう。市役所に突き当たったら曲がるだけだ。しかし、山崎「婦警さんけっこうかわいかったな」、阿瀬見「ああ、オレも一緒に聞きに行けば良かった」。ダメだ…こいつら。
 言われた通りに進むと、たしかに記憶に思い当たる通りへ出る。籠太発見。
 かなり混んでいたが、一番奥のテーブルに入れた。
 この店の名物、酒を飲みながら料理をするイカしたオヤジは、今日も健在だった☆
 一杯目はヱビス生。二杯目からは日本酒へ。日本酒のメニューもあるのだが、オヤジのオススメをくれ、と頼むがおもしろい。好みを聞いて、多少の独断と偏見を加味して酒を決めてくれる。後半はメニューに乗ってない、新入荷品を出してきた。最高だ!オヤジ(笑)
 料理はどれも「バリウマ」。バリウマを連呼していたら、阿瀬見に「全部同じかよ!」といわれる。うむ、筆者の舌には全部最上級。それ以上の食べ物に対する表現は、筆者の貧相な舌には無理だ。
 オススメはかんぶらの田楽。かんぶらとは会津方言でジャガイモのこと。ああ、あとなすの田楽もうまい。なすは季節ものだしね。この店は味噌がおいしい。うーん、とにかく全部うまいのだ!
 さすがに飲みつぶれるほど飲んでいないのだが、おばちゃんによく飲むねとほめられる。あれ?ほめられたんだよな? 6k弱というのも、絶対的には宿代ぐらいあるのだが、価値的には安い☆
 会津に行くときは必ずこの店に来よう。


 時刻表の確認をミスって、準備していないところに、よりにもよってやってきた国鉄色のキハ。編成は58-58-52と思われる。真横から編成を全て収めた写真はこのホームページ初かも。とっさにカメラを向けただけなので、真ん中に邪魔な電線が映っている。残念。
(小屋の畑駅付近にて 2002.09.15)

 湯瀬温泉駅を出発するキハ58・58コンビと、それを撮影する人々。
 キハ58でブルドーザータイプの雪かき(スノープロウ)がついているものは珍しい?
(湯瀬温泉駅にて 2002.09.15)

9/16(月) 会津若松〜新津〜会津若松〜野沢〜新潟〜東京

 会津の観光は昨日の飲み屋で終了(笑)
 今日はいきなり会津を出てしまう。旅の基本は始発なのだが、みなの疲労と寝不足を考慮して2番列車にする。
 あさ、目が覚めると外は雨。…ついに降ってきたかぁ。一人旅の時は降らないんだけどなぁ。やっぱ、山崎が雨男っぽいな…。
 筆者は晴れると思って傘を持ってきていない。が、まだ晴れパワーがなくなった訳じゃないらしく、風呂から上がったら、雨も上がっていた。今にも降り出しそうではあるが、いちおう雨は落ちてきていないようだ。
 キハ47・47コンビに乗って、磐越西線を西進。目指すは新津だ。
 今回の旅の目的のひとつ、新津の鮭の弁当を食べるためだ。始発で行っても、まだ駅弁が売っていないだろいうというで二番列車となったのだ。
 磐越西線は非電化、単線、窓が開くということで、筆者の好きな要素を全て持っている路線なのだが、筆者にはそれを楽しむ余裕はなかった

うがー!寒い!

 もともと寒がりの筆者。この雨で気温が低く、まだ季節じゃないので入ることのない暖房のため、ひとり震えていた。阿瀬見もわたりさんも気持ちよさそうに寝てるし、山崎に至ってはこの寒いのに窓開けて車窓を撮影していたりする。っていうか、山崎はセーターを出したのか。うむ、用意周到なのは良いことだ。
 駅弁を食べるため、朝御飯はまだなのだが、体を温めるためにカロリーを補給することにする。非常食として持ち歩いていたベビースターとアーモンドチョコを平らげる。少しはマシになったが、やっぱり寒い。と、阿瀬見とわたりさんの近くを通ったときに、すごい熱波を感じた。一人で占有していたボックス席から撤収し、あせみとわたりさんの寝ているボックス席に移動。

うわ〜、コイツらあったけ〜(笑)

 体の体積があると、体表面単位面積あたりから発する熱量が増加するので、ストーブの役割を果たすのだろう。極寒に暮らす生物が大きいのは淘汰の結果であるから、小さいと寒さには弱いことは自然が実証しているのである。
 しばらく暖まっていると、摂取したカロリーが燃えだしたのもあって、ようやく活動臨界温度を超えて活動できるようになる。しかし、また雨が降り出してきた。
 新津駅で駅弁をGET。山崎の分が足りなくて、別途ホームで受け取るというイベント発生。山崎はいつも間が悪いなぁ(^^;
 入線してきたSLばんえつ物語号を撮影し、乗り込む。早速弁当をいただく。塩味のきいた焼き鮭はなかなかうまい。これは別途ご飯をおかわりしたくなる☆ なんか満腹になったら元気になってきた。
 乗車手帳が全員に配られる。今回でもう何度目になるかわからないSLばんえつ号乗車だが、来るたびに手帳がバージョンアップしている。最初はJR中心のイベント列車だったこのSLだが、今や手帳にはたくさんの観光地がタイアップしていた。今やSLばんえつ物語号は沿線の磐越西線沿線の看板娘となっている。
 運転初年から、毎年乗りに来ている筆者としては嬉しい限りだ。娘が成長しているのを見守る気持ちとはこういうことをいうのか? この前新潟に来たときに知った、SLばんえつ物語号のファンクラブにも入ったし。
 車掌が切符を改めに来る。筆者と阿瀬見はすかさず、SLばんえつ物語号ファンクラブのスタンプ帳を突き出す。ハンコの数に従って記念品がもらえるのだ。目標は5個。一回の乗車でひとつなので、最大で1日2つGETできる。今日は往復するので2つ。それでも最低あと2回は乗りに来ないといけない。
 今日は磐越西線を途中下車しまくろうと思ったのだが、こう天気が悪くて寒いのでは、途中下車してもおもしろくない。SL初乗車の山崎ははしゃいでいたし、わたりさんも楽しんでいるようなので

このまま会津までSLの旅でいいや☆

 もう会津までSLでいって、帰りもSLで新潟まで行っちゃえ。
 気温が低く、湿度が高いため、SLの蒸気が消えずに後ろの車両まで流れてくる。これはこれでよいものだ。雨降りも悪くない。…ま、ちょっとは負け惜しみだが。
 津川でツアーらしき客が一気に降りてしまい、車両はがらがらになる。うちらは一人ずつボックス席について、窓を全開にして先頭のSLを撮影する。カーブにさしかかるたびシャッターが切られ、トンネルのために窓が閉められる。

いやー、大人げない…けど楽しい(笑)

 客が少なかったので、いつもは抽選であたるピンバッヂも、今回は係のおねーさんとのジャンケン勝負になった。わたりさん勝ち抜けでピンバッヂGET! おお、これがそうか、初めて見た☆
 SLが行く先々で「撮りてつ」の群れがレンズを向け、撮影が終わると列車の通過を待たずに車にダッシュして、次の撮影ポイントへ移動を開始する。地元の人達が手を振る。朝からSLばんえつ物語号限定のビールをワゴン販売から買い占めたり、ロビーカーで車窓を眺めたり。いやー、SLは撮るのもいいけど乗るのも楽しいなぁ。
 最初、やる気がないので会津まで戻っちゃえと思ったのだが、最後はもう途中で降りる気なんかなかった。
 この季節はそばの花の季節で、沿線のそば畑は白と緑の鮮やかなコントラスト。晴れてたらどういう風に見えるのか、また来年乗りに来てみようかと思う。いや、その前に冬に乗りに来るかなぁ。
 そんな感じで会津まで戻ってくる。移動のことだけを考えると、午前中かけて会津と新津を往復しただけだ。他の人から見たら「なにしてんだかなぁ」という感じかも(^^;
 会津若松でSLが到着ホームから移動すると、記念撮影していた観光客も去っていく。

ふふ、甘い甘い…

 ここからがSLばんえつ物語号の最大のショータイムなのだ。ご存じの通り、SLは行きと帰りで列車の向きを変えないといけない。これから、その作業が行われるのだ。会津若松までわざわざ来たのはこれを見るためでもある。もう何度も見ているが、何度見てもおもしろい。
 5番線からSLが行ったり来たりするのを堪能する。ちょうど天気も回復しつつあり、雲の切れ間から空がのぞいている。いまさらだけど、雨よりはずっといい♪

 新潟行きのSLには、会津からは乗らない。一本前の普通列車で先に会津を出て、途中の駅でSLを向かえることにする。とはいっても、新潟に帰るSLは時間的に遅いため、日の出ているうちに向かえるとなると、16時ぐらいが限度である。また、SLは快速扱いで、筆者の好みである本当に何もない駅には停車しない。SLが停車しない駅で撮影をしてしまうと、東京に帰れなくなってしまうのだ。
 結局、野沢駅で迎え撃つことにした。
 普通列車はキハ47の2両編成。両開きの扉が特徴の、近郊形のキハである。客が少ないのを確認し、窓を開けて風を楽しむ。少し寒かったが朝ほどじゃない。磐越西線は阿賀野川に沿って、人里離れた山の中を走る。磐越西線につけられた「森と水とロマンの鉄道」というサブタイトルは、この路線をよく説明していると思う。
 会津駅でかなりの台数のキハ110形を見た。磐越西線もそう遠くないうちに従来キハとの置き換えが進んでいくんだと思う。窓の開く従来キハがあるうちに、この窓からの風を味わっておこう。

 寝こけていた道連れを起こして野沢駅で下車。待ち時間が少ないので駅をうろうろしてSLを待つ。
 入線してくるところを撮影!

しかし、痛恨の電池切れ!

 最後の最後にどうしてこういうアクシデントが来るかなぁ…。せっかくいい絵が撮れると思ったのに(T_T) トラブルってのは必ず「ここぞ」って時に起きるもんだなぁ。ああ、こういうときは新品の電池に入れ替えておかなきゃいけなかったのに。全然反省がいきていない…。

 今日は一日磐越西線を1往復半しただけ。何もしていないと言うこともできる。
 道連れ達はすっかり寝ている。毎日朝早かったのだから無理もない。無理して起きて車窓を、風を楽しむのもよし。列車の音を聞きながら、揺れに任せて寝るのもよし。
 日常ではないこと、それが旅と言えるのではないか。

 帰りの新幹線は自由席に横一列四人。エビスビールで乾杯! そしておやすみなさい。
 旅発−日常行の新幹線の中、気づくともう次の旅のことを考えている。もう一度リベンジしたい場所、まだ行ったことのない場所。
 今回の道連れ達は、この3日間で何を持ち帰ったのだろう。また行きたいと思っているだろうか。もう二度とゴメンだと思っているかもしれない。何でもいい。
 収穫のない旅などありえないことを筆者は知っているのだから。それは日常の数ヶ月にも匹敵するかもしれない、日常では決して得られないものに違いない。
 旅は道連れ。さて、次は誰を道連れにしようかな♪


おまけ 何歩あるいたの?
1日目:21558歩=約10km
2日目:30980歩=約15km
3日目:11074歩=約5km


 新津駅に停車中のSLばんえつ物語号。残念ながら雨降りだったが、雨降りならではの黒光りもなかなか☆ …少し負け惜しみ(^^;
 SLは真っ黒なので、露出を合わせるのが難しい…。
(新津駅にて 2002.09.16)

 復路のために汽車の付け替え作業中のSLばんえつ物語号。と、それを撮る人達。写真はまだ客車を牽いているところだが、切り離し、転車台で向きを変えたあと、再ドッキングを行う。バックで走るSLを見ることができるのはこの作業中だけだ。撮影は作業の邪魔にならないようにね!
(会津若松駅にて 2002.09.16)

2002.09.14-09.16