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鋼鉄の愛馬と魔法の書が君を四大陸へいざなう。 知らない場所、初めての街、さまざまな出会いが軌道の先にある。 シャレてる暇はない。さあ、出発の時間だ! |
第0011号 2001.09.01-09.02 |
本日のお目当て、トロッコ列車を牽引するED18 2。ノスタルジックと言うよりレトロという感じがする。前後にある人の乗る(つかまる?)ところは取り外されてしまっているようだ。これで、飯田線トロッコ牽引車は3両とも見たことになる♪ (上市場駅付近にて) 右→ 飯田線119系5000番台。飯田線はやっぱり2両がかわいい。写真左手の崖(?)のすぐ隣は水路になっておりなん、なんと、線路より高い位置を水が流れている。この壁のせいで池場駅のホームはかなり細い。 (池場駅付近にて) |
9/1(土) 〜横浜〜豊橋〜池場〜上市場〜
青春18切符が使えるのは9/10まで。仕事の方が上期末に向けて忙しくなってきたので、まともに土日が休めるのは今週ぐらいと見切りをつけて、あと2日残っている青春18切符を使い切ることにした。
9/1と決めた時点で行き先は決まっていた。7/20にいったばかりの飯田線である。前回のときにトロッコ列車の牽引機関車のスケジュールが貼り出されていて、9/1はED18 2の牽引する日なのだ。また、前回はいろいろとやり残したことがあるので、それを解消しておきたい。今度こそ、電車と競争だ!(笑)
まあその前にだ、前回はあまりに無計画すぎたので、今回は時刻表を見て午前中ぐらいの日程まで立てておいた。計画なんてこのぐらいがちょうどいいのだ。あまり計画を立てすぎると、すっかり旅した気分になってしまって、行く気がなくなってしまうのだ(笑) それに当日の天気や気分、新しい発見などがあってどうせ先の日程なんてくずれてしまうのだ。午前中の日程だってへたすりゃ危うい(^^;
もうひとつ、今回の旅の柱にもってきているもの、それは旅の原点へ
である。最近、時間がないのと金があるのをいいことに、どうもぬるい旅が多い。旅は楽しいだけじゃダメだ。苦しかった旅こそ、あとに残る思い出も感慨深い物になり、そして自分の中でなにか少しの成長があるものだ。
そして青春18切符という切符の意義。金はないけど暇と体力はあるという学生時代、この切符がとても輝いて見えた。始発に乗り、終電で降りて次の始発を待つような使い方をしてこそ、この切符も浮かばれるというものだ。朝8時に出ているようではダメなのだ。24時をまわった瞬間、この切符の魔法は発動し、その効果は24時間。取り戻せ、切符の意義を、そして元をとるのだ!(笑)
というわけで、選択された列車は「ムーンライトながら」。昔、青春18切符の代名詞とも言える大垣夜行が廃止になり、大垣までの夜行列車として生まれたこの列車は全席指定席というひどい電車だ。しかし、それも小田原まで。小田原を過ぎれば指定席は1/3両のみだ。今回は飯田線がターゲットであるため、後ろ三両の名古屋止まりの車両も選択できるため、座れる確率もアップすると言うものだ。
指定席なので、指定を取ればいいじゃん、という声が聞こえてきそうだが、ムーンライトながらの指定席をとるのは下手なイベント列車の指定を取るよりも難しい。一ヶ月前の発売日当日に買わないと手に入らないという代物なのだ。突然決めた旅で、手に入るものではないのだ。それに、ムーンライトながらのすし詰めのデッキというのも青春18切符のつらく楽しい思い出づくりに貢献しているのだ(^^;
仕事が思ったよりも速く片づいたので、ムーンライトよりも5足ぐらい先に小田原に着いておく。結構早くからムーンライトに並んでいる人がいるので、早ければ早いほどいい。ただし、ぎりぎりだと横浜で日付が変わるため、横浜からは青春18切符が有効になるのだが、早く行く場合には小田原まで切符を購入する必要がある。
2330に小田原に着いたとき、どの列もまだ4人ほどしか並んでいなかった。これなら何とか座れるかもしれない。淡い期待をもちつつ、待つこと1時間半。ムーンライト直前の普通列車が到着するころにはホームには電車に乗りきれないほどの人がいる。やっぱ、混むわ、ムーンライト…。淡い期待は捨て去った(^^;
しかも信じられないことに、ムーンライト到着と同時に列が完全に崩れる。横は入りし放題だ! 関東は整列乗車がかなり守られている地域なのだが、やはり夜行の列車で座りたいという欲求は人の理性よりも強いようだ。前から4列目にいる俺はあまり関係ないのであっさり乗り込めたが、後ろでは罵声が聞こえる(^^; こえー。
が、座席の方は満席で空いている席など皆無。結局4番目の俺も椅子はなしである。ただ、4番目というポジション上、列車のほぼ真ん中付近まで深く進入していた。個人的には最後にデッキに乗り込んで扉を自分の背中部分に確保するのが楽だと思っていたのだが、今日はものすごい混んでいるらしく、デッキでは悲鳴が聞こえる…。なんと乗り切れない人登場(^^;
最終的にはなんとか詰め込んだのだが、デッキは満員電車の山手線並みの圧縮率。LZHもかなわなそう。
が、列車の中央付近は肩さえ触れ合わない。もともと通路は狭いので1列であり、バスなどでありがちな入り口のみ混雑状態。やはり2枚扉ともなると、中心部の圧縮率が低くなるようだ。おかげで熟睡。
もっとも、狭い通路で体を畳んでいるため、足はしびれるわ腰は痛くなるわといろいろ大変なのだが、どこでも寝られる特技を持ってすれば、寝ている間は関係ない。起きたときは大変だけど(^^; 夜行列車に乗るたびに、小さくて良かったと思うね。これが普通の人だとシートに座っているにもかかわらず寝られなかったりして、結構大変なのだ。
と、起きると豊橋だった。まあ、さすがにそれは少し誇張しすぎだが、豊橋入線時の減速で目が覚めた。豊橋の停車時間は30分ぐらいあるので慌てることはない。列車の真ん中にいるので、みんなに立ってもらって車外へ。なんか、モーゼになった気分(笑)
豊橋に着いたが、飯田線の始発まで1時間半ある。飯田線に入ってしまうとメシもままならないので、今のうちに買い出しを行う。こういうとき、24時間営業って助かるよね☆ かなり早めの朝御飯をかきこみ、飯田線の始発を待つ。やはり始発に乗ってこそのローカル線でしょう。ローカル線は本数が少ないので、時間を無駄にしないためにも始発がベスト。その分列車に遭遇する回数が増えるからだ。写真を撮るなら絶対始発。
ところが始発が出る頃、あたりはようやく明るくなり始めた程度で写真を撮るには暗かった。…そうだよ、もう9月だもんなぁ…。とはいえ、すぐにあたりは明るくなり始め、朝の列車シーンを撮影することができた。それと、今日もいい天気だ♪ 天気予報見てこなかったけど、晴れると信じてた。よし、晴れ男度さらにアップだな(笑)
豊橋の近くはまだまだ街が続くので、1時間ほど仮眠。最初の目的地である池場に下車する。降りたのは自分だけだったが、ホームには逆方向の電車を待つ家族がいた。飯田線、そこそこ使われている? 反対側の列車はすぐに来たが、これが全席満員でびっくり。ほとんどが学生だったのをみて、夏休みが昨日までだと改めて気づく。今日は土曜日だから学校あるのか? 9/2まで夏休みなのかと勘違いしていた。
下りの列車が空いていたのは、そっちの方向には学校がないからだとわかった(^^;
さて、池場に降りた理由は、前回通りかかったときにホームに壁が押し迫っていてすごく狭くて、変わった駅だなと思ってメモっておいたからだ。降りてみると列車からは見えなかったが、その壁の向こうには水路が流れていた。水路の高さは飯田線の線路よりも高い場所にある。降りてみるといろいろ発見があるなぁ。
他に何もないのだが、狭い変わったホームで今日のメインイベントのトロッコ列車を写真を撮ろうかと思っていた。いくつか撮影ポイントを検証し、その後やってきた列車で撮影ポイントを評価したのだが、どうもいまいち。トンネルは反対側の出口までみえておもしろいが、列車が来たらそれは見えなくなってしまう。また、普通列車を取るにはいいが、機関車を取るには高いところからのアングルはあまりよくない気がした。
次の撮影ポイントに向けて移動することに決定。昨日の計画、ここでおじゃん(笑)
どこにいい撮影ポイントがあるか不明なうえに、時刻表を見るとトロッコ列車が来る前にはもう上り電車がない。つまり、行き過ぎたらもう戻れない。うーん、人生ってやっぱり後戻りはできないようになっているのね。
ふと時刻表から目を上げると、この席だけ窓のところに開閉金具がある! もちろん上の段だけどほかのはみんなついていないのにここだけついているのだ。久しぶりに窓から入ってくる風を受けたなぁ。ちょっと嬉しい。
そうこうしているうちによさげな鉄橋を発見。お、これはと思っているとちょうど出馬の駅だ。ちょっと考えて、降りようと席を立ち上がった瞬間、ドアが閉まる。…2秒ぐらいしかドア開いてなかったけど、それでいいのか!? 結局この駅では降りられずじまい。が、もともと悪運が強いのか、次の駅までは1kmと離れていないうえに、その間には大きな鉄橋があった。見通しもクリアで撮影ポイントとしては申し分ない。今度は扉が開くと同時に車外へ出る。また閉められてはたまらない(^^;
上市場駅はこれ以上ないという無人駅で、困ったことにトイレがない。ちょっと困った事態になってきたので、トイレを探すことに。一瞬民家でお借りしようかということまで考えたのだが、ちょっと離れたところにドライブインがあったので一命を取り留めた(^^;
落ち着いたところで撮影ポイント探し。やはり駅のすぐ近くにある鉄橋がよいようだ。ただ惜しむらくはカーブの方向が太陽の方向に対して逆だということ。こういう場所では射程距離の長いレンズがあるとこれを克服できるのだが、デジカメには望むべくもない。普通列車を何本か撮影し、これで朝の列車はほぼ終了。昼間はほとんど列車がなくなる。ローカル線でも朝は列車が多い。朝早く出た方がいいもうひとつの理由だ。これも早起きは三文の得ということなのだろう。(?)
さて、トロッコが来るまであと2hほどある。駅の周りを散策すると、田んぼにはすでに稲はなく、収穫の季節が始まっていることに気づいた。赤とんぼもたくさん飛んでいる。もう秋なんだなぁ。夏の終わりはいつもちょっと寂しい。秋は秋で紅葉が綺麗なのでいいんだけどね(笑) やっぱ、暑いのが好きだからかな。
このあたりではそれが普通なのかどうかはわからないが、刈り取った稲は丸太にかけられて乾燥されていた。昔はこの景色が当たり前だったのだが、コンバインがもみを稲から取るところまでやってしまうようになってから、さっぱり見かけなくなってしまった。こうして稲が干されているのを見たのは久しぶりだ。ここはとっても田舎の風景があるところだな。
と、遊歩道を発見した。その遊歩道の先にはどうやら滝があるようだ。距離とか時間とかの表記が一切なかったのだが、滝と聞いて引き下がるわけにもいかない。1時間行ってダメだったらそこで引き返してくればいいやと歩き出す。が、道はあまり人の通った形跡がなく、こけむして滑りやすくなっていて、さらに蜘蛛の巣が襲いかかってくる。最後に人が通ったのはいったいいつなんだろう(^^;
看板もちっともないので、不安になりながらも分かれ道もなかったので歩くしかない。だんだん道は道っぽくなくなってくる。ほとんど獣道だ。看板にはふれあい遊歩道と書いてあったが、高低差や崩落しかけている道はアドベンチャーと言った方がいいだろう。ま、その分、私のような冒険家には自信を持っておすすめできる。
2番目の看板は峠にあった。一応道は間違っていないことがわかったので一安心。看板によると、ここまで1.3kmほど来ているらしいのだが、あと1.4kmとの表示。20分で1.3km来ていたので時間的には問題ないという判断で滝への道を進む。さらに道の状況は悪化していて、山で仕事する人達が使うような道になってきた。
と、突然遊歩道が普通のアスファルトで舗装された道に出てしまう。ものすごい悪路を制覇し、すでにくつはびちょびちょで足も痛いというのに、この状況はいったい…。ここってものすごい山の奥深くじゃないのか!? アスファルトの道路もなにやらこけむしており、車が頻繁に通る様子ではないのだが、それでもアスファルトには違いない。道路もちゃんと通っている開けた山の中を、わざわざアドベンチャー道で突破してきたことになる。…そりゃおもしろかったけどさぁ、なんか素直にこの状況を受け入れられない。
ショックを隠しきれず、しかしとにかく滝を目指す。
滝は舗装道路のすぐちかくにあった。これなら車でひょいと来れる場所だ。山奥の前人未踏の隠れ滝を期待していたのだが、その夢は完璧に砕け散った。なっとくできねー!
叫んでみても誰もいない。何はともあれ、ほとんど人が訪れていないという点では、間違っていなかったようである。ここまで、人っ子一人見かけていないし、もちろん車も見ていない。肝心の滝の方はというと、こちらは予想に反して大きくて立派な滝で来た甲斐があったというもの。山奥の隠れ滝を求め、たどり着いた滝はしょぼしょぼなんてことはよくあることなのだが、これだけの規模で人が誰もいないというのも珍しい。やっぱ、飯田線ってマイナーなんだろうな。車で来にくいし。観光客は誰もいないが、滝を見学するための柵や階段は立派な物だった。すばらしいのは滝壺まで降りる階段が絶壁のところに設置されていること。滝を見るための展望台しかないことが多いのに、この降りる階段にはびっくりした。ま、階段があっても、普通の大人は降りない物なのかもしれないが、そこはそれ、大人げない俺にはそこにある階段を下りない訳にはいかなかった。どうせ靴はぬれてるしねー(^^; いちおう階段を下りたところは石が顔を覗かせているので水の中に入らないで済んだ。水が冷たくて気持ちいいので、蜘蛛の巣と汗ででろでろになった腕と顔を洗う。ついでにもう頭まで水をかけてしまった。あー、きぃもちいい〜! アドベンチャー道を苦労して突破したのは間違いじゃなかった。苦労なくして感動なし。もういつのまにやら納得していた(笑)
さて、戻る段になってアドベンチャー道を行くか、アスファルト道を行くかを選択しなければならない。体の疲労と納得いかない度を考慮するとアスファルト道になるのだが、手持ちの地図にはこの道が載っていない。山を下りていく方向に進みさえすれば遭難するようなことはないだろうが、変なところに出てしまった場合、目的のひとつであるトロッコ列車を見ることができなくなってしまう。せっかく見つけた撮影ポイントだ。そこに戻ってトロッコ列車を撮影したい。
地図には沢らしき物がかかれていて、こいつは先ほどあっという間に扉が閉まってしまった出馬駅付近に出ている。この道路が沢沿いに山を下りているかは確実ではなかったが、飯田線のトンネルの多さとアドベンチャー道の勾配などを考慮すると、隣の山にそのままみちがつながっているようなことはないと判断した。だいたい同じ道を戻るなど、ポリシーに反するぉ
つーわけでアスファルト道をてくてくと降りていく。いやー、疲れた足に下りはボディーブローのように効きますな(^^;
いままで人を見かけなかったのだが、突然目の前に民家というか、キャンプ場らしき物が姿を現した。看板を見るとせせらぎ荘とある。峠の看板に、滝と一緒にかかれていたもうひとつの分かれ道の先にあったやつだ。峠から300mとか書いてあったので、やっぱりアスファルト道はアドベンチャー道のすぐ近くにずっとあった模様(^^;
距離は駅からおよそ1.5kmほどと近い割には水が完全に透明で、なかなか良さそうなキャンプ場だ。バンガローも何基か確認できるので、テントがなくても大丈夫そうだ。
沢沿いにずっと道が続いているので、心配していた遭難の件は大丈夫そうだ。民家もいくつか見えてきた。そして目の前にあるのは線路。おお、これはまさしく飯田線、戻ってきた! で、ここはどこだろう。線路沿いの風景は見たことがある。やはり上市場よりも出馬駅がわに出たのは間違いなさそうだ。山から下りてきたのと、太陽の方角とを見て、自分の持っている方角が正しいことを確認。線路に向かって右が岡谷方面に間違いない。上市場はこっちの方角だ。
方角はあたっていて、200mも行かないうちに出馬駅発見♪ このあたりは駅間が短いのですぐに次の駅に着く。出馬駅で撮影しようかとも考えたが、やはり撮影ポイントの鉄橋は捨てがたく、上市場駅まで歩いていくことにした。川を渡ったところにある国道ならきっと上市場に行けるだろう。が、ちょっと遠い。線路沿いに続く道は途中でどっかに行ってしまうかもしれない。上市場との間にトンネルがあったかどうかの記憶が定かではなかったので、もしトンネルがあった場合、上市場にはたどり着けない可能性が高い。検討の結果、線路沿いを行くことにした。途中にいい撮影ポイントがあるかもしれないと思ったからだ。
どきどきしながら歩いていくと、これまた200mも行かないうちに視界が開け、眼下に例の鉄橋が姿を現した。思ったよりもかなり駅間短い…(^^;
本当に今日は強運な日だ。いつもだともっと迷うのだが…。アスファルト道を降りてきたのでトロッコが来るまでまだ30分ほど時間がある。さすがに少し疲れたので、撮影ポイント近くの空き地で一休み。農作業をしに来た地元の人と会話をする。ここらの人は村の外の人にも親しげに話しかけてくれる。言葉のなまりとしては西ではなく、北日本系、新潟や秋田の言葉に近い感じがする。話によるとたまに撮影しに来ている人がいるとのことだが、今日は誰も来ていないようだ。
いよいよトロッコ列車の来る時間が近づき、撮影ポイントで待ち伏せる。列車を待つこの10分が異様に長く感じる。列車の撮影は一回限りの勝負なので、漢を感じる(笑) 上市場はトロッコの停車駅ではないため、ものすごいスピードでやってくるかと思ったのだが、実際はそれほどでもなく、デジカメでもシャッターを切るのに苦労はなかった。ただし、前述のように太陽光との位置関係が今ひとつであるため、絞りなどを細かく設定できないデジカメでは露出の問題がどうしてもクリアできなかった。ちょっと絞りすぎで逆光気味(T_T)
ちゃんとした写真取りたいならデジカメでは厳しいなぁ。わかっちゃいるけど、一眼レフだと機動性が犠牲になるのでアドベンチャー道とかに突撃したりしにくくなるし…。こんな旅にはデジカメの方がむいてると思うんだけど。つーか、くだらないものいっぱい撮るしねぇ。
トロッコ列車が去ってイベントも一段落したところで、上市場駅の待ち合わせ室へ。次の列車まで1時間以上あるため、休憩がてら旅日記を書く。現場で書かないとなかなか旅日記が完成しないからだ。もちろん時刻表チェックして今後の予定も考える。すでに現時点で予定が未定状態である。
時刻表を眺めていると、次の列車で飯田方面に行くのもいいが、2時間ほど待つと中部天竜からさっきのトロッコ列車が戻ってくることがわかった。昼は電車の本数が少ない時間帯のため、他の駅でのトロッコ列車の待ち伏せはできない。こうなったらトロッコ列車、往復で面倒見てやろう!
次の下り電車をやり過ごし、ホームで靴と靴下を乾かしながらトロッコ列車を待つ。眠かったので少し昼寝もする。こんなにのんびりしたのは久しぶりだ。待つのも悪くない。
しばらく旅日記を書き進め、ふととなりを見た時、そのものすごい光景が目に飛び込んできた。
なんと、傍らのゴミをいれたコンビニ袋に大量のアリがたかっていたのだ。昼ご飯に食べたサンドイッチの包み袋やらなんやらが入っているのだが、その袋の中全部アリといっても過言ではない。いる、確実に300匹以上いる!
それは虫の嫌いな人が見たら卒倒してしまいそうな光景だった。別に虫が嫌いでない俺でも、30センチばかり飛び上がったのだから。はたいてもはたいてもいっぱいいすぎて減らないので、こうなったら一網打尽にするしかないと思い、コンビニ袋を堅く縛る。この段階でも袋の中には確実に200匹以上はいると思う。なにやらゾワゾワ動いている。うー、びっくりしたぞ。
メシを喰ってから1時間と経っていないのに、どこからこんなに大量のアリが集まってきたのだろう。
子供の頃、お菓子とかをぼろぼろこぼしていると「アリが来ちゃうよ」とよく言われたものだ。そして実際、家の窓にアリの行列ができてお菓子まで続いていたこともよくあったものだ。東京、横浜ではそんなことに出会うはずもなく、すっかり忘れていた。やっぱりすごいね、昆虫は。
でも、このコンビニ袋どうするかな(^^;
トロッコ列車が戻ってくる時間が近づいたので撮影ポイントへ。今度こそ順光と思いきや、夕方になって曇ってきてしまい少し暗め。気合いを入れてみたのだが、晴れてこない。やっぱ、滝で疲れ切ってるからかなぁ(^^;
ここでも地元の人が声をかけてくる。しかも線路の向こう側からである。こんな時は思わず笑顔がこぼれるね。
結局列車が通過する時にも曇ったままで、ED18 2はいまいちいい写真が撮れなかった。鉄道写真の難しいところだね。ま、旅のついでに撮っているようなものなので、あまりこだわっていないから問題なし。
再び列車を待つ。本当は今日はもうひとつ、浦川駅か、水窪(みさくぼ)駅に途中下車しようと思っていたのだが、トロッコ列車にかまいすぎて時間がなくなってしまった(^^; 今日のところは温泉に入って終了することにした。
温泉はこの春オープンした平岡駅の駅舎も兼ねている龍泉閣。漆喰白壁のお城のような立派な建物なのだが、いまいち飯田線のイメージから浮いている…。ふれあいステーションというふれこみで、地域の説明とか展示とかが少しあるのだが、ちっともやる気を感じない。龍泉閣のほうも受付はあるが、ほかに何の案内板も出ておらず、いったいどういう施設なのかもわからない始末。名前から察するに温泉がありそうだと思っていたのだが、案内になにも書いていないので、温泉がないのかと思ってしまった。受付の人に聞いてようやく温泉があり、日帰りでも入れると言うことが判明。風呂は最上階で、国道沿いの小さな村と、山と川が見える展望風呂。露天もサウナ設備もなく、ひとつの風呂だけだ。入浴料は500円でシャンプーとソープはおいてある。単純イオン泉。客はだれもおらず、次の電車まで1時間半あるので、かなりだらだら風呂に入る。今日はたくさん歩いて、足も痛いし汗もたくさんかいたので風呂は極楽だ♪
風呂から上がって飯田へ向かう。今日はトロッコ列車をかまっていたので中部天竜と豊橋間にいたわけだが、ここから平岡経由で飯田へは電車に乗ってる時間だけでも2.5時間がかかる。平岡駅で年輩の車掌さんが、「(豊橋から)4時間もかかってここ(平岡)までだよ。新幹線なら岡山ぐらいまで行ってるかな」と苦笑していたが、いつも乗っているとその魅力に気づかなかったりするものだ
以前、姫路城の土産物屋のおばさんが「いつも立派な城を見れていいですね」と話しかけられて「そんなに立派かねぇ?」と苦笑していたのを思い出した。
電車に揺られてうとうとと車窓を眺める。飯田に着く頃にはすっかり暗くなっていた。
コンビニで弁当を買ってホテルにチェックイン。今日は疲れたので早く寝…るわけにはいかないのだ。わざわざ飯田まで来たのには理由があった。前回やり残した飯田線最大の目的。
「電車と競争」をせねば!
手持ちの地図では詳細さにかけるために、再びコンビニに出向いて飯田市の2万分の1地図を購入。
フフフ、これだけ詳しい地図があれば、もはや勝ったも同然だ!
待ってろ飯田線、明日始発列車に挑んでやるからな!
あ、そうそう、アリを一網打尽にしたコンビニ袋は結局平岡駅に捨ててきました。
アリの魂よ安らかに眠りたまえ…。
飯田線の夜明けぜよ! なんて言っていないことは確かだが、朝焼けの中列車の入れ替え待ちの車掌さん。
都会ではなかなかみられない、車掌さんの人となりがかいま見れたような気がした一瞬。
(東上駅ホームにて)
のどかな田舎の風景を走る119系。ちっちゃい電車と大きな自然のハーモニー。やっぱりローカル線は心が和むなぁ。
(上市場駅付近にて)
9/02(日) 〜伊那上郷〜下山村〜伊那上郷〜天竜峡〜浦川〜豊橋〜横浜
さあ、いよいよ飯田線との勝負の日。気合いを入れて出発だ。
上り豊橋方面の始発列車は0623伊那上郷駅を出て0636に下山村駅に到達する。勝負区間は13分。かなり短い。しかし直線距離で約2km。1km5分あれば走れる。…この荷物ではちょっと大変だが、勝負にそんなことは言っていられない。
上り列車の始発に比べて、下り列車の始発は早い。車両基地が天竜峡前後に存在しないため、上り列車として帰ってくるために下り列車が早いのだ。そんな下り列車に乗って飯田線から伊那上郷までの2駅を移動。地図を確認しつつ、ルートを再確認。
と、地図に載っていない細い道が目に入った。お、これは近道っぽい!
始発の上り列車がホームに到着。間違いなく同じ列車だという証拠写真のために車両番号を撮影、そしてフライングにならないようにとドアが閉まったのを確認してから走り出す。
目指すは2km先の下山村駅。最初の角を計画通りに右折。よし、計画通りだ、そして次の信号を左ナナメへ…、次の信号…む? そう、もう予定と違っていた。まだ駅から200mと進んでいないのに。
ま、方角はあってるんだから問題ない。走り続ける俺の前に登り坂が現れた。…登り坂、…でいいのか? このときぐらいからかなり不安になってきた。そして坂を上りきったところにある小学校。あきらめて足を止め地図を見るが、小学校なんて載っていない。いったいここはどこなんだ。そう、この時にはもう完全に迷っていた(^^;
とりあえず方角が違うだろうってことで、方角を修正。さらに進むと、前回阿瀬見と来たときに歩いた大通りが見えた。しかも、飯田市の中心にある飯田城跡のすぐそばだ。かなり間違えた。さすがにこれは間に合わないだろうと思ったのだが、悔しいので一応走り続ける。前回歩いた道なのでもう自分の現在位置はわかっていた。そして下山村駅に到着。0645。9分遅れである。
息が整うのを待って地図を見てみると、最初に90°方角を間違っていたことがわかった。小学校が地図で見つけられなかったのは、まさかそんなところに行っているとは思わなかったので違うところを見ていて見つからなかったのだ。
だいたい1kmぐらい余分に走ったことが判明。しかしそれだけでは9分遅れを取り戻すことができない。ということは最初の1km5分という計算が甘かったと言うことになる。持久走のタイムから考えて、荷物なしだとそのぐらいだろう。しかし、今の装備重量は約5kg。そんなに速く走れるはずもない。
なんで他の人は勝てるんだろう? 時刻表を見ていると、その答えがあった。さっきの始発列車は飯田駅での停車時間がないのだが、他の列車では5分から8分、長いものになると30分なんてのもある。これじゃ飯田線と勝負といってもピンキリである。オリンピック選手なみのやつから幼稚園児までいるようなイメージだ。そう、さっきの始発は飯田線最速。
そりゃー勝てねーよ(^^;
いわばモーリスグリーンだったのだ!(笑)
そして次の相手の予想タイムは20分。下山村0724−0744伊那上郷である。今度の相手も遅い訳じゃない。いや、ちょうどいいライバルになりそうだ。いいだろう、望むところだ。
とはいえさっきの一戦で足はがくがく。息は絶え絶えだ。正直、ここまで運動不足だとは思わなかった。すでに人間としてやっていけないぐらい体力が低下していると思う。最悪だ。
しかし、ここで退くわけには行かなかった。飯田線に勝つためにここまで来たのだ!
決意を固めてヨーイドン! 走り出したらもう誰も止められない。勝利をつかみ取れ!
列車が来るまでの間、地図を何度も見て暗記した。さっきの一戦の反省を加えて、ルートは完璧に頭の中にできあがっている。これなら楽勝だ。
しかし、それはいつもなら、の話だった。今はすでに体力の限界すれすれ。情けないことに足がもう動かない。心肺機能は低下していると思っていたが、筋力が先にダメになるとは思わなかった。くそ、負けてたまるか!
本当に最後は気迫のみで走る。
そしてなーんかさっきまでいたような気がする伊那上郷駅に戻ってきた。列車はまだ見えない。4分残しの、余裕の勝利だった。
やってきた列車は間違いなくさっき下山村駅で見たヤツだ。汗だくになりながらも、誇らしげに電車を見送った。今日のところは一勝一敗。引き分けにしておいてやるぜ!
新たな決意を抱き、次の上り列車で飯田市の決戦場を後にした。
次はモーリスグリーンに勝つ!
列車は天竜峡止まり。今回は天竜峡に用はないのだが、またしばらく列車が来ないので駅の周りをぶらつくことにした。前回行ったソバ屋は今回もまだ開いていない。って、前回以上に早い時間なのだからしかたない。だいたい駅の立ち食いソバ屋だって開いていないのだ。
ぶらぶらと天竜峡の方へ行ってみる。天竜峡温泉に入ろうと思って駅に一番近いホテルに行ってみると、なんとつぶれていた。この様子だとずいぶん前からやっていないようだ。やっぱり天竜峡は流行ってないんだな…。川の向こうのホテルは温泉にはいることができるようだが、もうあまり時間もないのであきらめて駅へ戻り、開いたばかりの立ち食いソバ屋でソバをいただく。
アクエリを飲みながら駅の待合室でぼーっとしていると、鈴虫のけたたましい鳴き声が耳に痛い。本来、鈴虫ってのは透き通るような鈴の音に似た音をだすから鈴虫というのである。そして「ああ、もう秋か。夏も終わりなんだなぁ…」と感傷にでもひたりたいところなのだ。しかし、ここの鈴虫は虫かごにこれ以上ないというぐらい詰め込まれており、みんなが一斉に鳴くものだから、えらいやかましい。風情も吹っ飛ぶにぎやかさだ。ま、いっぱいいると言っても昨日のアリにはかなわないのだが…(^^;
なんか、雄雌1つがいぐらい持っていっても誰も気づかないこと間違いなしっていうぐらいはいる。あー、まじで鈴虫欲しいなぁ…。
1時間待ちの後、再び列車での移動を再開。ちなみに、鈴虫はあきらめた。なぜって、虫かごのフタをあけた瞬間、いっぱい逃げ出しそうなぐらいいるから。
次の途中下車は浦川駅に決定。前回、阿瀬見が寝ているすきにおもしろそうな駅をメモっていたのだが、そのうちのひとつである。浦川駅の近くの鉄橋から見えるのは川の中州にある大きな島。その島の両側にそれぞれ釣り橋がかかっていて川の両側を結んでいる。いったいあそこに何があるのか、それを探るのが目的だ。
ここともうひとつ、川の中州に同じように釣り橋がかかっていて、その中州に神社のような物が建っている水窪(みさくぼ)というところがあるのだが、列車の関係で今回は見送ることにした。モーリスグリーンに破れなければ行けたんだけどねぇ。
浦川駅は小さな駅だったが、駅を降りると最初におとり鮎を売ってたりして、釣り人には知られた街のようだ。
しかし、川に行くのはちょっと待った。
そろそろ中部天竜へ向かうトロッコ列車が来る頃だ。まずはこいつを撮影してから中州探検に出かけることにする。最初、鉄橋で撮影しようと思ったのだが、時間的にそこまでたどり着けそうもないので、駅の近くで撮影ポイントを探す。あまりいい場所がなく、結局トンネル出口に陣取って撮影をした。近くで撮ったのでかなり迫力のある絵が撮れた。しかし、よく考えるとホームでの撮影でも良かったかもしれない。ちなみに、今日のはEF58−157だった。機関車が日替わりというのもおもしろい。
さて、いよいよ中州に出発。と、目的の中州にかかる吊り橋を渡ろうとしたとき、恐い看板を発見した。危険につき、一度に10人以上の通行を禁ずる 佐久間町
何が恐いって、佐久間町って書いてあるところが信憑性があって恐い(^^;
これだけ大きいと、間違って10人乗っちゃうことだってありそうだ。それに、何キロの人で10人と決めているのだろうか。なかなかに興味深い。
いよいよ中州に到着してみると、なんとそこはキャンプ場になっていた。バンガローもある立派なキャンプ場だ。こんな中州にあって、ダムの放流とかもあるのに、まさかキャンプ場とは予想しなかった。飯田線、あなどりがたし。
とりあえずもう一方の吊り橋を渡って川の向こう側に行ってみたものの、これ以上は特に何もなさそうだ。
土手の上から釣りを見学してみたが、だーれも釣れていない。おとり鮎を見て、「お、釣れた!」と思うこともなくなってきた(笑)
駅に戻り、待合室で遅めの昼御飯。飯屋がなく、ご飯も売っていないので仕方なくスナック菓子で空腹を満たす。しかし、この駅、待合室に時計がないのは何かの挑戦なんだろうか?(^^;
この時間帯、列車の本数が少ないので2時間半待ちになっていて、あと1時間半ある。
しかも今日はこのまま帰らないといけないわけで、そうのんびりもしていられない。一応時刻表で最終便まで調べてあるので、そんなに慌てる必要がないのはわかっているが、前回思い知ったように豊橋−横浜間は想像以上の距離がある。もっとも前回はあまり調べていなかったため、乗り継ぎが悪かった。今日は一番乗り次の良い列車をチョイスしてあるので、前回に比べてずいぶんと早くなるはずだ。それでも帰り着くのは夜になる。とてもトロッコ列車の帰りを待つことはできない。この浦川を最後に飯田線を離れなくてはならない。
ここからすばらしい乗り継ぎリレーの開始。青春18切符の元を取りまくるべく普通列車で横浜を目指す。目指せ新記録!?
上り列車で一路豊橋へ。豊橋着1556。
豊橋発1602−1638浜松着、浜松発1648−1851沼津着、沼津初1858−2102横浜着。
東海道をちょうど5時間で制覇だ! めっちゃ遠いなぁ(^^;
勝利の鍵は沼津発東京行きにうまくつなげること。三島なんかでもたもたしている列車を選んではいけない。って、今回もおみやげ買うのを忘れてるよ…。
あまりにも乗り継ぎがすばらしかったということで、今回はおみやげなしとしておこう。
さて、今回の旅は飯田線リベンジということで、7月の旅で果たせなかった飯田線との勝負ができて非常に満足した旅だった。特に滝への冒険と、飯田線との勝負は、生涯忘れられそうもない体験だった。
旅の原点とは何か。
いつも書いていることだが、旅に行って憶えているのは、苦しかったり辛かったりしたことだけだ。楽しいことっていうのは楽しかったけど、なにがそんなに楽しかったのかをあまり憶えていないものだ。だからいつも旅に出るときには覚悟を決めて無茶をすることにしている。それが、思い出に残るたびにするための秘訣である。
「かわいい子には旅をさせろ」という言葉があるが、それは楽しい旅行をさせろということではないと思う。日常ではなかなか出会うことのない苦労や困難に立ち向かうことで、子供を成長させろということだ。そして成長するのは子供だけではない。人生生涯が成長の過程なのだから、大人にだって旅をするべきだ。
自らが選んだ道を自らの力で貫き通す。得た物はなにものにもかえられない物になるはずだ。
他のお得な切符はなくなっても、青春18切符だけはなくして欲しくない。
人生は各駅停車。無限の軌道の先にあるものは人それぞれに違うもの。探しに行こう、時刻表と青春18切符を持って。
モーリスグリーンこと始発上り列車。「快速」の文字が朝日に輝く。次は勝つ!
(伊那上郷駅ホームにて)
地響きをたてて間近を通り抜けていくEF58157。さすがにちょっと恐かったので、次からはもうちょっとはなれて撮ろう(^^;
(浦川駅付近にて)